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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

 鎌状赤血球症(Sickle Cell Disease: SCD)は、異常な成人ヘ​​モグロビンの産生によって遺伝性貧血を引き起こす。一方で、成人期における胎児ヘモグロビン(HbF)値の上昇は、疾患の重症度を軽減する。SCDの有望な治療法として、造血幹/前駆細胞(HSPC)をCRISPR-Cas9で処理し、+58 kbエンハンサーに二本鎖切断(DSB)を生成してHbFリプレッサーBCL11Aをダウンレギュレーションすることが挙げられる。
 フランスとイタリアの研究チームは今回、安全性とHbF誘導を改善するために、塩基エディターを使用して、DSBを生成せずに+58 kbと+55 kbの両方のエンハンサーを標的とするアプローチを選択した。
 研究チームは、転写活性化因子によって認識される主要なDNAモチーフを分析し、重要なヌクレオチドを特定し、マルチプレックス塩基エディターを介してこれらの部位を効率的に破壊し、SCDCRISPR-Cas9誘導編集で達成されるレベルを超えるレベルまでHbFを再活性化しながら、DSBとゲノム再編成をミニマルに抑制することに成功した [グラフィカルアブストラクト引用右図参照]
 さらに、塩基編集はHSPCの長期的な再増殖に効果的であり、in vivoで強力なHbF再活性化をもたらした。
 これらの知見は、BCL11Aエンハンサーのマルチプレックス塩基編集がSCDを治療するための安全で効率的かつ永続的な戦略であることを示している。
[出典] "Multiplex base editing of BCL11A regulatory elements to treat sickle cell disease" Fontana L [..] Antoniou P, Miccio A. Cell Rep Med. 2025-09-26. https://doi.org/10.1016/j.xcrm.2025.102376 [所属] Université Paris Cité (FR), Genethon, Integrare Research Unit UMR_S951 (Université Paris-Saclay, Univ Evry, Inserm, Genethon), University of Padova (IT), University of Foggia
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