ヒトiPS細胞(hiPSC)から機能的に成熟した肝細胞を樹立することは、薬物スクリーニング、肝毒性および肝疾患研究におけるin vitroゴールドスタンダードモデルとして、初代ヒト肝細胞(primary human hepatocytes: PHH)に取って代わる可能性を秘めており、将来の細胞治療応用へのゲートウェイ技術と考えられている。しかしながら、ドイツの研究チームは最近、hiPSCから肝細胞様細胞(hepatocyte-like cell: HLC)を誘導するための現在のプロトコルでは、分化を肝系統に限定できないことを報告した [Nell P et al., J Hepatol 2022 ]。すなわち、scRNA-seqおよびタンパク質発現解析により、現在のプロトコルはハイブリッド分化を誘導し、個々のHLC内に肝臓および腸管の遺伝子発現シグネチャーが豊富に確立され、肝細胞の機能と表現型が損なわれることを発見した。
研究チームは今回、iPSCからHLCへの分化誘導を行い、その後、PHHと比較して、iPSCからHLCへの分化中のトランスクリプトームの変化を解析した。発現差のある遺伝子(differentially expressed genes : DEG)の分化パターンクラスタリング( Differentiation pattern clustering: DiPaC)と下流のバイオインフォマティクス解析により、HLCにおけるハイブリッド分化シグネチャーの確立に関与する遺伝子制御ネットワーク(GRN)が同定され、HLCと腸管上皮細胞(intestinal epithelial cells: IEC)のハイブリッド分化において、腸管上皮細胞の分化に重要とされているcaudal-domain type 2(CDX2)の影響が示唆された。
CRISPR-Cas9を介してCDX2−/− iPSCを樹立し、HLCへの分化、トランスクリプトミクス、腸管および肝臓におけるタンパク質発現解析を行った。CDX2−/− HLCで観察された表現型変化は、毛細胆管輸送動態および腸管酵素活性の機能解析によって検証され、PHHと比較した。
iPSCからHLCへの分化におけるトランスクリプトーム解析をPHHと比較した結果、HLCにおける腸管分化遺伝子発現シグネチャーの確立が確認され、HLCの誤った系譜決定においてCDX2が主要な役割を果たしていることが示唆された。 iPSCからHLCへの分化過程における
CDX2の欠損は、HHEXおよびPROX1の誘導を通じて肝臓分化を促進し、一方で腸管分化シグネチャーを劇的に減少させた。CDX2−/− HLCは、腸管関連膜タンパク質(IBAT、SI、LCTなど)の喪失、肝トランスポーター(BSEPなど)の増加、サイズの縮小など、毛細胆管の表現型の成熟を示し、PHHによって形成される毛細胆管と機能的および構造的に類似した形態を示した [グラフィカルアブストラクト引用右図参照]。
CDX2の欠損は、HHEXおよびPROX1の誘導を通じて肝臓分化を促進し、一方で腸管分化シグネチャーを劇的に減少させた。CDX2−/− HLCは、腸管関連膜タンパク質(IBAT、SI、LCTなど)の喪失、肝トランスポーター(BSEPなど)の増加、サイズの縮小など、毛細胆管の表現型の成熟を示し、PHHによって形成される毛細胆管と機能的および構造的に類似した形態を示した [グラフィカルアブストラクト引用右図参照]。[関連crisp_bio記事]
- 2025-07-16 大腸がんにおいてCDX2の欠失が浸潤性とtumor buddingを促進する.
[出典] "Elimination of CDX2 restricts intestinal hybrid differentiation signatures in stem cell-derived hepatocyte-like cells" Nell P, Thomitzek A, Feuerborn D et al., Stem Cell Res Ther 2025-10-07. https://doi.org/10.1186/s13287-025-04696-6 [所属] Leibniz Research Centre for Working Environment and Human (ドイツ), University of Saarland, Freie Universität Berlin and Humboldt-Universität zu Berlin, Humboldt-Universität zu Berlin
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