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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[注] 重症先天性好中球減少症 (Severe Congenital Neutropenia: SCN)
 ELANE(elastase, neutrophil expressed)の常染色体顕性変異は、重篤な先天性好中球減少症(CN)および周期性好中球減少症(cyclic neutropenia: CyN)を引き起こす。CRISPR/Cas9を介したELANEノックアウト、または、プロモーターを標的とするCRISPR-Cas9ニッカーゼをベースとする塩基エディターのいずれかによってELANE の発現を阻害するアプローチが、CN患者の移植可能な造血幹細胞の欠陥のある顆粒球分化を回復させる有望な遺伝子治療戦略として浮上している。
 テュービンゲン大学病院を主とするドイツの研究チームは今回、ELANE プロモーターの2つのヌクレオチドを標的として好中球エラスターゼの発現を抑制する、アデニン塩基エディター(ABE)を介したアプローチを実装し、PRECISEとして発表した。
 ABEをmRNAまたはタンパク質ベースで送達したところ、いずれのプラットフォームでも、健康なドナーの造血幹前駆細胞の編集に80%を超える効果があった。しかし、CN患者の細胞ではタンパク質ベースのABE送達のみが68%を超える編集を達成した。
 一方で、興味深いことに、CN患者の造血細胞においてABE mRNAを用いた10~19%程度の編集により、in vitroで顆粒球分化が回復し、ABE RNP編集細胞において顕著な改善が認められた。
 PRECISE編集を受けた好中球は、好中球細胞外トラップ (neutrophil extracellular trap: NET) 形成、酸化バースト (oxidative burst / respiratory burst)、貪食能など、正常な機能を示した。
 ゲノムの完全性解析では、ゲノム変化や染色体異常は認められず、非コードイントロン領域に限定された2つのオフターゲット編集のみが認められた。
 PRECISEは、ELANE  変異の異質性に対処し、ELANE関連CN/CyNに対する臨床的応用に有望な塩基編集戦略である。
[出典] "Targeted Inhibition of ELANE Expression Using Adenine Base Editing to Treat Severe Congenital Neutropenia" Find B, Dannenmann B [..] Nasri M, Skokowa J. Mol Ther Methods Clin Dev. 2025-11-04. https://doi.org/10.1016/j.omtm.2025.101626 [所属] University Hospital Tübingen (ドイツ), University of Tübingen, Gene and RNA Therapy Center, Medical Center – University of Freiburg, University of Freiburg, Severe Chronic Neutropenia International Registry, Hannover Medical School, German Cancer Consortium - partner site Tübingen;グラフィカルアブストラクト
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