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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

 弾性線維仮性黄色腫(Pseudoxanthoma elasticum: PXE)は、皮膚、網膜、動脈全体にわたる弾性線維の異所性石灰化を特徴とする常染色体潜性結合組織疾患である。この疾患は、主に肝細胞に局在する膜貫通型トランスポーターをコードするABCC6 遺伝子の病原性バリアントによって引き起こされる。肝細胞におけるABCC6機能の喪失は、石灰化の強力な阻害因子である無機ピロリン酸(inorganic pyrophosphate: PPi)の全身的欠乏につながる。体内を循環する血液におけるPPiの枯渇が、PXEで見られる多臓器にわたる異所性石灰化をもたらす。
 こうしたPXEの発症機序から、ゲノム編集による肝臓標的の病原性バリアントの修正とそれに続く全身性PPiの回復が、PXEに対する単回治療法となる可能性がある。
 PXE患者に最も多く認められるバリアントの一つがABCC6 c.3490C>T (p.R1164X) である。ペレルマン・ペンシルベニア大学医学大学院を主とする米国の研究チームは今回、アデニン塩基編集(ABE8.8とDNA/RNAハイブリッドgRNA (hyb18gRNA) [*])によるR1164Xバリアントの肝臓標的修正により、標準食または異所性石灰化を増悪させる「促進食」を摂取したマウスにおいて、血漿PPiが回復し、異所性皮膚石灰化が抑制されることを実証した。
 これらの結果は、PXEの分子病因に関する根本的な知見を提供するとともに、アデニン塩基編集によるABCC6 遺伝子欠陥の遺伝学的修正が、PXEの新たな永続的治療法となる可能性を示している。
[*] 関連crisp_bio記事
[出典] "Liver-directed base editing of ABCC6 prevents ectopic calcification in a variant-
humanized mouse model of pseudoxanthoma elasticum" Testa LC [..] Li Q, Wang X. Mol Ther Nucleic Acids. 2025-11-10. https://doi.org/10.1016/j.omtn.2025.102769 [所属] Perelman School of Medicine at the University of Pennsylvania (米国), Children’s Hospital of Philadelphia, Philadelphia, Thomas Jefferson University,  George Mason University;グラフィカルアブストラクト 
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