crisp_bio

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 CRISPR-Casは、細菌およびアーケアがファージに対して用いる防御システムである。スペーサーと呼ばれるファージDNAの一部が、免疫記憶を構成するCRISPRアレイに組み込まれる。CRISPRアレイの方向は、CRISPRシステムとその標的の機能の解析と理解する上で重要であり、その方向を特定するための手法がいくつか開発されてきた。方向の予測にはこれまで、スペーサーを区切る反復配列、新規スペーサーの挿入位置を決定づけるとされているリーダー配列の位置、Cas遺伝子、PAMなど、様々な特徴が用いられてきた [論文 Table 1 参照]。しかし、これらの特徴だけでは方向を確実に予測するには不十分な場合が多く、また、異なる手法間で結果が一致しない場合もあった。
 驚くべきことに、ほぼすべてのCRISPRシステムは、アレイのリーダー端に極性を持つスペーサーを挿入することが知られている。研究チームは今回、得られたパターンを利用して一連のCRISPRアレイの獲得方向を予測する手法、CRISPR-evOrを開発した [論文Fig. 1 参照]。
 CRISPR-evOrは、獲得方向の可能性について、アレイの進化史の尤度を再構築・比較することで実現されている。すなわち、単一のスペーサーアレイだけでなく関連するスペーサーアレイの集合のデータを利用し、新しいスペーサーが常に一方の端(リーダー端)に追加されるという生物学的事実に基づき、スペーサーの挿入と削除を含めたアレイの進化史を再構築し、両方の可能な方向(順方向と逆方向)で進化史が発生する確率を計算した上で、最も可能性の高い方向の決定する。確率の高い方向が予測として選択され、双方の確率が近すぎる場合、信頼性の高い予測は行わない。
  • CRISPR-evOrは結果的に、Casの種類、リーダー配列の有無と位置、転写方向に依存しない予測を可能にした。
  • CRISPR-evOrは、他のCRISPRアレイ方向予測ツールでは確実に予測できないアレイに対して特に有用であり、既存ツールによる矛盾する予測を検証または解決するのにも役立つ。CRISPRCasdbの対象サブセットに含まれるアレイの28.3%の方向を高い信頼性で予測できる。
  • また、CRISPR-evOrは、リピート配列やリーダー配列、そしてそれらの方向に関する知識が限られている、CRISPRアレイの希少なサブタイプに対しても予測可能である。
  • したがって、CRISPR-evOrは、CRISPRDirectionやCRISPRstrandといった他のツールに優る。
  • CRISPR-evOrは、進化情報を活用するため、より関連性の高いアレイが利用可能になった将来、この割合がさらに増加すると期待される。
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[出典] "An evolutionary approach to predict the orientation of CRISPR arrays" Fehrenbach A [..] Baumdicker F. PLoS Computer Biol. 2025-11-18. https://doi.org/10.1371/journal.pcbi.1013706 [所属] University of Tübingen (ドイツ), University of Freiburg, Mohammed Bin Rashid University of Medicine and Health Sciences (アラブ首長国連邦)
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