[注] 母性-胚性転移 (maternal-to-zygotic transition: MZT)
MZTは、胚性ゲノムの活性化(Zygotic Genome Activation: ZGA)と母性由来のmRNAの除去を含むリプログラミング過程である。MZTを制御する因子はいくつか同定されているが、その機能が未だ解明されていない母性RNAが数千種類存在している。その解明を目指して、スペインと米国の研究チームは今回、ゼブラフィッシュにおいて、キナーゼおよびホスファターゼをコードするmRNA、あるいはそれらを制御するタンパク質を標的とするCRISPR-RfxCas13d [*] 母性因子スクリーニングを実施した。
- このスクリーニングにより、分岐鎖ケト酸脱水素酵素キナーゼ(branched-chain ketoacid dehydrogenase kinase: Bckdk)がMZTの新たな翻訳後制御因子として同定された。
- Bckdk mRNAのノックダウンは、被包(epibody)の異常、ZGAの調節不全、miR-430による母性RNAの効率的な除去の欠如、H3K27acレベルの顕著な減少を引き起こした。
- リン酸化プロテオーム解析から、Bckdkの枯渇により、クロマチンリモデリング因子であるPhf10/Baf45aのリン酸化が低下し、さらに、phf10 mRNAのノックダウンはZGAも変化させた。
- Phf10のリン酸化レベルを回復させると、bckdk mRNAの枯渇後に観察された発生異常が修復され、H3K27acレベルが回復した。
これらの結果は、CRISPR-RfxCas13dスクリーニングが、初期脊椎動物発生の新たな制御因子を発見し、タンパク質リン酸化を介したMZTの翻訳後制御の解明に有効であることを実証している。
[*] 2025-03-28 ゼブラフィッシュにおけるRNA標的CRISPR-Cas技術の強化.
[出典] "CRISPR-RfxCas13d screening uncovers Bckdk as a post-translational regulator of maternal-to-zygotic transition in teleosts" Hernández-Huertas L [..] Bazzini AA, Moreno-Mateos MA. EMBO J. 2025-11-18. https://doi.org/10.1038/s44318-025-00617-8 [所属] Pablo de Olavide University (スペイン), Universidad de Sevilla, Stowers Institute for Medical Research (米国), University of Kansas Medical Center; グラフィカルアブストラクト
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