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- 日本の研究チームが、ウナギの筋芽細胞株に続いてウナギの脂を生成する細胞株を樹立
1. ウナギの筋芽細胞株の樹立
 北里大学の研究チームは、ニホンウナギ(Anguilla japonica)の筋肉組織由来の初代培養細胞の分離、分析、および特性解析を行い、最終的に自然発生的に不死化した(spontaneously immortalized: 無限に増殖可能な)筋芽細胞株JEM1129を樹立した。
[詳細]
 培養ウナギ肉生産の基盤を確立するため、ウナギの筋肉組織からサテライト細胞を単離した。初期の細胞培養には筋芽細胞が含まれていたが、継代培養を継続するにつれて筋芽細胞の特性は低下し、線維芽細胞様細胞が増加した。RNA-SeqおよびRT-qPCR解析により、継代培養に伴い、サテライト細胞および筋芽細胞の確立されたマーカーであるpax7aやmyoDの顕著なダウンレギュレーションが示され、筋芽細胞特性の喪失が明らかになった。この課題を克服し、筋芽細胞の純度を維持するために、単一細胞クローニングを採用し、JEM1129細胞株を樹立するに至った。
 JEM1129細胞は、筋芽細胞マーカー遺伝子の発現が増強され、初期の初代培養細胞集団を上回った。これらの細胞は、特に分化培地で培養した際に強力な筋管形成を示し、筋肉発達に対する強力な潜在能力を示した。
 JEM1129細胞株は、ウナギ筋細胞の培養における大きな進歩であり、ウナギ培養肉生産への道を開いた。
[出典] "Development of a novel Japanese eel myoblast cell line for application in cultured meat production" Ikeda D, Otsuka Y, Kan-No N. Biochem Biophys Res Commun. 2024-10-02/11-29. https://doi.org/10.1016/j.bbrc.2024.150784 [所属]北里大学
2. 肉と脂が揃ってこそのウナギ - ウナギの脂を生成する細胞株を樹立
 北里大学と東京都立産業技術研究センターとの研究チームが、ニホンウナギの筋肉組織から、ウナギの風味や食感に不可欠な“脂”をつくる細胞の樹立に、世界で初めて成功した。これらの細胞株は、ウイルスや薬剤を使用することなく得られた自然不死化細胞株で、連続培養が可能である。また、細胞株がつくる脂の組成は、市販の養殖ウナギと非常によく似ていることも確認されている。
 研究チームは、稚魚由来の筋肉組織に由来する細胞を長期間培養し、形態的特徴を手掛かりに分離・培養することで、強力な脂質蓄積能を持つ3種類の細胞株(JE-KRT224、JE-EK9、JE-F1140)を樹立した。これらの細胞株は、 120 回以上の細胞分裂を経ても安定した増殖能力を維持しており、人為的な遺伝子操作なしに無限に増殖する。
 これらの細胞株は、外因性脂肪酸(オレイン酸)を効率的に吸収し、細胞内脂質を蓄積し、天然ウナギ肉に匹敵する脂肪酸プロファイルを形成した。さらに、すべての細胞株は標準的な誘導条件下で脂肪細胞への分化した。これらの細胞株はまた、間葉系マーカーであるビメンチン、主要な間葉系幹細胞マーカー(CD29、CD73、CD105)、および脂肪形成マーカー(PPARG、FABP4)を発現しており、間葉系幹細胞由来と考えられる前駆脂肪細胞であることが示唆された。 

 筋芽細胞株と脂を生成する細胞株を組み合わせることで合成ウナギを生産する道筋が見えてきた。

[出典]
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