- Massachusetts General Hospital/Harvard Medical SchoolのGary Ruvkun教授(2024年ノーベル生理学・医学賞受賞者)と、Vamsi K. Mootha教授を責任著者とするNature 誌刊行論文紹介
フラタキシンは、古代のミトコンドリア鉄硫黄クラスター生合成機構の主要構成要素であり、システイン脱硫酵素NFS1のアロステリック活性化因子として機能する。フラタキシン(FXN)遺伝子の変異ひいてはタンパク質レベルの低下は、最も一般的な遺伝性運動失調症であるフリードライヒ運動失調症の原因であることが知られている。
一方で、Vamsi K. Mootha研究室は先行研究において、低酸素状態がヒト細胞、線虫、およびマウスにおけるフラタキシンの喪失を部分的に回復できることを「許容的(permissive)低酸素分圧」として捉えていた。研究チームは今回この事象を利用して、フラタキシンの必要性を回避する「抑制変異」を同定することを試みた。
研究チームは、CRISPR-Cas9 GEを介してフラタキシンを完全に欠損した線虫(C. elegans )を作製し、低酸素条件下で培養することで、本来であれば生存できない線虫を対象とする実験を可能にした。その上で、線虫にランダムな遺伝子変異を導入し、フラタキシン欠損線虫にとっては致命的となるはずの状況である酸素レベルが高い状況でも正常に成長する個体を探索した。続いて、生存している個体のゲノム配列を解析し、生存個体がフラタキシンを必要とせずに必須の鉄硫黄クラスターを産生できるようにする特定の変異、FDX2/fdx-2 およびNFS1/nfs-1 における顕性作用性ミスセンス変異、を発見した。
- 今回特定された抑制変異は、鉄硫黄クラスター産生を部分的に回復させ、電子伝達系複合体レベルを上昇させ、成長回復をもたらしていた。
- In vitro生化学およびヒト細胞培養を用いて、鉄硫黄複合体への過剰なFDX2の結合が、鉄硫黄複合体産生を阻害することが、確認された。
- 結合界面におけるミスセンス変異、または、ヘテロ接合性fdx-2 欠損変異体における野生型FDX-2 レベルの低下によって達成されるNFS-1上のFDX-2の占有率の低下を介して、フラタキシンの必要性を部分的に回避することが確認された。
- Fdx2 発現を低下させることで、フリードライヒ運動失調症のマウスモデルで観察される神経学的欠陥を軽減できることが実証された。
これらの知見は、FDX2の部分的ノックダウンによってフラタキシンとFDX2の化学量論的バランスを回復することが、フリードライヒ運動失調症の潜在的な治療法となる可能性を示唆している。
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[出典] "Mutations in mitochondrial ferredoxin FDX2 suppress frataxin deficiency" Meisel JD [..] Ruvkun G, Mootha VK. Nature 2025-12-10. https://doi.org/10.1038/s41586-025-09821-2 [所属] Massachusetts General Hospital, HHMI, Harvard Medical School, Broad Institute, Brandeis University, Texas A&M University
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