効果的な性分離(sex separation)は、蚊の遺伝子制御において依然として重要な課題である。その多くはオスの大量放出に依存しており、そのためにはメスを完全に除去する必要がある。遺伝的雌雄判別系統(Genetic Sexing Strains: GSS)は、雄性を選抜可能な形質に結び付けることで、効率的かつ自動的に雌を除去する戦略である。
エルサレム・ヘブライ大学を主とするイスラエル、ドイツ、フランスの研究チームは今回、デング熱、ジカ熱、チクングニア熱などのアルボウイルスを媒介する侵略性ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)において、CRISPR工学により改変された選択可能な表現型と、雄性決定因子であるnix を介した性転換を統合した、汎用性の高いGSS開発プラットフォームを開発した。
概念実証として、まず、CRISPR/Cas9 GEによりメラニン生成に関わるyellow 遺伝子を破壊し、すべての蚊が黄色の表現型を示す安定したホモ接合型変異株を作出した。次に、mini-yellow と、雄決定因子のnix の双方を含むレスキュー遺伝子を用いて遺伝的雌を暗色の"pseudomales (擬雄)"に転換した。
こうして、サイズの違い(雄の方が大きい)、色の違い(黄色い雌と暗色の雄)を利用して性分離を実現し、暗色で稔性のある雄だけを放出するSIT(Sterile Insect Technique / 不妊虫放飼法)が可能になる。
このようにして自然二形性と人工二形性の統合による雌雄判別精度の向上が実現し、研究チームは、これは内因性遺伝子に基づいて蚊に導入された初めての性連鎖選択形質であるとし、スケーラブルなGSS開発の基盤を築くものとしている。
[出典] "Mosquito sex separation using complementation of selectable traits and engineered neo-sex chromosomes" Zara DSY [..] Papathanos PA. Nat Commun. 2025-12-11. https://doi.org/10.1038/s41467-025-66940-0 [所属] Hebrew University of Jerusalem (イスラエル), Institute of Plant Protection, Justus Liebig University of Giessen (ドイツ), Institut de Biologie Moléculaire et Cellulaire (フランス)
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