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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

2026-07-16 治験の参加者のエピソードが New Scientist 誌で紹介されました。
[出典]  "I’m the first person whose life was saved by CRISPR base editing" Alyssa Tapley, New Scientist. 2026-06-30. https://www.newscientist.com/article/2532296-im-the-first-person-whose-life-was-saved-by-crispr-base-editing/
 当時13歳のAlyssa Tapleyさんは、2021年のイースター (4月4日)を過ぎて、学校にいけないほどの疲れを感じ、ある日自宅で呼吸が異常なことに気づいたご両親に連れられて救急外来を訪れ、数日でT細胞白血病と診断され、その後、2度の化学療法が効果を示さず、10月には骨髄移植を受け、クリスマス過ぎには、それも効果がなかったことが分かりました。
 ご両親が八方手を尽くしている中で、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン (UCL)のWaseem Qasim教授が進めている治験を聞きつけたSheffield Children’s Hospitalのコンサルタントの勧めで、Great Ormond Street Hospitalに向かいました。そこで出会ったWaseem教授とRobert Chiesa博士から「CAR-T細胞を体内に注入すると、それらがどんどん増殖して、あちこちを巡りながらがん細胞と戦い、すべて死滅させてくれる」と聞いた時に、彼女は「まるでSFの世界の中にいるようだ」と思ったそうです。
 ご両親は「最後の数週間を苦しい治療を受けながら病院で過ごすよりも、例えば、ディズニーランドにでかけるようなことで過ごした方がよいのではないか」と悩んでいましたが、13歳の彼女は「よし、やるぞ」「もし自分にとって何の役にも立たなかったとしても、誰か他の人の役には立つはずだから」と思ったそうです。彼女にとってそれはまた「長い間何もコントロールできてこなかった過去を払拭すること」でもあったようです。
 17歳になった今、彼女は寛解状態にありますが、すべてが解決したわけではありません。甲状腺の機能が低下しています。これはCAR-T細胞治療のせいではなく、その前処理で受けた強力な化学療法の副作用によるものです。「だからこそ、研究や取り組みをさらに進めることが重要なのです。そうすればいつか、人々がこうした過酷な化学療法を受ける必要がなくなり、すぐにCAR-T細胞治療を受けられるようになるかもしれませんから」と彼女は思っています。
 彼女は自分の経験について話すために、学会に参加することもあります。ある学会では、今回のCAR-T細胞療法のベースになった「塩基エディター」を開発したハーバード大学のDavid R Liu教授に会うことができ、思わず泣いてしまったそうです。「その時の動画は、かなり恥ずかしいものですが」と彼女は付け加えました。
 彼女は生物医学の学位取得を目指す企業派遣の技能修習生制度(degree apprenticeship)[Science Portal 2016.11.01]に参加したいと思っています。もし、CAR-T療法が彼女にもたらしてくれた効果の半分でも、誰かの役に立てれば、本当に素晴らしいと思って。

 このエピソードは、塩基編集という技術が論文や実験室や手術だけで完結するものではなく、一人の患者の人生を変え、その患者自身が次の医療を支える側になろうとしていることを、教えてくれています。
2025-12-17 NEJM 誌刊行論文に準拠した初稿
 CD7は、再発性または難治性のT細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)に対するCAR-T細胞療法の魅力的な標的である。塩基エディターCBEを介したTCRαβ、CD52、およびCD7のトリプルノックアウトを有する抗CD7 CAR(BE-CAR7)T細胞を用いたヒト初回試験では、良好な結果が報告されていた [#1]
 今回、第1相試験からの中間報告がNEJMから公開された。リンパ球除去療法を受けた再発性または難治性T細胞性ALLの小児9人(16歳以下)にBE-CAR7 T細胞が投与された。また、コンパッショネート・ユースの位置付けにて成人2人も対象とした。
 リンパ球除去療法およびBE-CAR7の注入は、許容できない有害事象を招かず、全患者で循環CAR7 T細胞が検出された。合併症には、グレード1~4のサイトカイン放出症候群、一過性発疹、多系統血球減少症、日和見感染などがあった。
 全患者が28日目に完全寛解(形態学的完全寛解)に達したが、血球数は不完全回復であった。9名(82%)は深寛解(フローサイトメトリーまたはポリメラーゼ連鎖反応法による)に達し、幹細胞移植へと移行した。また、骨髄に定量可能な微小残存病変を有する2名は緩和ケアを受けた。
 移植により残存するBE-CAR7 T細胞が除去され、ドナー由来の多系統細胞再構築が促進された。ウイルス再活性化は頻繁に発生し、移植後3例に臨床的に重要なウイルス関連合併症が認められた。治験薬を投与された11例中7例(64%)は移植後3~36ヶ月時点で寛解が継続しており、2例でCD7発現の消失を伴う白血病が認められた
 これらの知見をもとに、「ユニバーサルBE-CAR7 T細胞は、再発または難治性T細胞性ALL患者において白血病寛解を誘導し、その結果、ほとんどの患者で同種造血幹細胞移植が成功裏に完了した」とされた。
[関連crisp_bio記事]
[出典] "Universal Base-Edited CAR7 T Cells for T-Cell Acute Lymphoblastic Leukemia" Chiesa R, Georgiadis C, Rashed H, Preece R, Hardefeldt P, Chu J, Selvage J, Mishra A, Ahmed B, Adams S, Thomas R, Gilmour K, Etuk A, Yallop D, O'Connor D, Qasim W; Base-Edited CAR T Group. N Engl J Med. 2025-12-08. https://doi.org/10.1056/nejmoa2505478 [所属] Great Ormond Street Hospital for Children NHS Trust, University College London Great Ormond Street Institute of Child Health, King's College Hospital NHS Foundation Trust
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