[注] フォン・ヴィレブランド病はフォン・ヴィレブランド因子の異常が原因の出血性の疾患であり、同じ出血性の疾患であっても血友病は、血液凝固第 Ⅷ 因子と第 Ⅸ 因子の異常が原因である。いずれも原因因子の活性が極端に低い (1%未満)の場合に重症とされる。血液病AとBについては、CRISPR療法の研究と臨床試験が進んでいる (例えば、crisp_bio 2024-09-10/2025-11-16; crisp_bio 2025-10-30)
重症血友病治療における画期的な革新とは対照的に、重症フォン・ヴィレブランド病(Von Willebrand Disease: VWD)の治療は、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)濃縮液の静脈内注入に限られており、現在まで、VWDを治療するための遺伝子治療に基づくアプローチは開発されていない。これは主に、この疾患の不均一な変異ランドスケープと、血管内皮細胞におけるVWF産生を特異的に標的とすることが困難なことに因る。
エラスムス大学医療センターを主とする研究チームは今回、VWFのヘテロ接合性ドミナントネガティブ変異によって引き起こされるVWD患者のための新たな遺伝子治療戦略を開発した。
この新たな戦略は、Cas9によるインデル導入を通じて病原性アレルのオープンリーディングフレーム(ORF)を選択的に破壊することにより、VWFバリアントを永久的に不活性化する。
バリアント特異的な設計の難しさを回避するため、VWFに共通するSNP rs1800378を標的とした。それぞれヘテロ接合性p.C1190Rおよびp.R1306W変異を有するVWD2AおよびVWD2B患者由来の血管内皮幹/前駆細胞の分画の一つである血管内皮コロニー形成細胞(endothelial colony forming cell: ECFC)を用いて、体外実験による原理実証を行った。
- NGS解析により、標的とならないアレルのVWF発現を維持しながら、VWFを効率的かつアレル選択的にノックアウト可能なことが、確認された。
- 野生型および変異型VWFプロテオフォーム(proteoform)を区別するバリアントマッピング質量分析により、ECFCにおける細胞疾患表現型の反転を伴う、変異型アレル発現の選択的低下が確認された。
共通SNPを標的とするVWDに対する新たな遺伝子編集戦略は、疾患を引き起こす変異、発症メカニズム、またはVWDサブタイプに制約されることなく、広く適用可能であり、VWDの治療法設計に適用可能である。
[出典] "Allele-selective Disruption of Pathogenic VWF Variants in Type 2 Von Willebrand Disease using CRISPR/Cas9" Bär I [..] Biering R. Blood Adv. 2025-12-18. https://doi.org/10.1182/bloodadvances.2025018760 [所属] Erasmus University Medical Center (オランダ), Sanquin Research, Amsterdam University Medical Center, University Medical Center Rotterdam, Leiden University Medical Center, INSERM (Le Kremlin-Bicetre) (フランス)
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