- CRISPR-Cas9ガイドRNA設計ツールCrackling [#1] のクラウド化"Crackling Cloud"を事例として
クラウドコンピューティングのプラットフォームの登場によって、自前のサーバーを導入・運用することなく、大規模なコンピューティングを簡便に実行することが可能になった。今回、Cracklingを開発していたオーストラリアの研究チームが、バイオインフォマティクス分野において、スケーラブルかつコストパフォーマンスの良いクラウドコンピューティングの潜在能力が未だ十分に活用されていないとして、Cracklingのクラウド化を事例として、"バイオインフォマティックスに対するクラウドコンピューティングの薦め”を提案した。特に、必要な場合にのみ動作し、自動的にスケールし、コストを削減するクラウドコンピューティングは、大規模な解析を低頻度で実行する研究者にとって理想的なアプローチであるとした。
Crackling Cloudは、再利用可能なクラウドアーキテクチャと、あらゆるAmazon Web Servicesアカウントにデプロイ可能な実用的な実装の両方を備えており、研究者は特別なハードウェアや専門知識を必要とせずに実行可能である。
Crackling Cloudを様々なサイズのデータセットでテストした結果、タスクの複雑さが増しても優れたパフォーマンスを発揮することが確認された。
Crackling Cloudはオープンソースであるため、導入と共有が容易であり、クラウドコンピューティングのアプローチは、バイオインフォマティクスツールへのアクセスを民主化し、科学研究におけるクラウド技術のより広範な利用を促進するのに役立つと考えられる。
[補足] ガイドRNA設計ツールCracklingのイベント駆動型クラウド・プラットフォーム
多重なガイドRNA(gRNA)のオンターゲット活性とオフターゲットの活性評価は、本来的に並列実行可能なタスクである。Crackling は、ガイドRNAの設計・評価を評価するツールの中で最も高速なものの一つである。CracklingはCPUのマルチスレッド処理とビット単位の演算を活用していたが、アクセラレーション技術やスケーラブルなクラウド技術は利用していなかった。
オンターゲット活性に基づいてgRNAを選択するために、Cracklingは最大3つの独立した手法を用いるコンセンサスベースで各gRNAを評価する[#1] 。このアプローチは、個々の手法を単独で使用するよりも精度が高く、応用実験では最大99%の編集効率を達成した [#2]。オフターゲット活性の計算は、設計プロセスの中で最も時間のかかるステップであり、これを克服するためにCracklingでは専用のインデックスを用いて密接に関連するCRISPR部位を抽出していた。
CracklingはgRNA設計ツールの中では比較的高速で正確であったが、エンドユーザーが複数の手法を同時に実行するCracklingを実行するために必要なリソースを持っているとは限らず、バイオインフォマティクスプログラムを扱う専門知識も必ずしも備えているとは限らない。これは、通常はソースコードとして提供されるgRNA設計手法全般に当てはまることでもある。
高性能コンピューティング環境の整備やオフラインツールの活用における課題を克服するため、研究チームはクラウドコンピューティングを利用を推奨する。ユーザーはテンプレートからgRNA設計プロトコルを"民主的な"コンピューティング・プラットフォームに展開できる。これは、他のgRNA設計ツールでは実現されていない。
Crackling Cloud は、BSD 3 条項ライセンスの条件に基づいてオープンソース ソフトウェアとして GitHub で公開(https://github.com/bmds-lab/Crackling-AWS)ており、誰でもがAmazon Web Services
が提供する動的なコンピューティング環境に展開・利用できる。
が提供する動的なコンピューティング環境に展開・利用できる。
[#]
- CRISPRメモ_2019/12/28 [第1項] 既存のガイドRNA設計プログラムの多数決をとると,現時点で最適なガイドRNAセットが得られる "Improving CRISPR guide design with consensus approaches" Bradford J, Perrin D. BMC Genomics. 2019/12/24.
- 2020-11-14 サンゴ礁の保護に向けて, 気候変動などのストレスに対する耐性の分子機構を解き明かすCRISPR/Cas9機能ゲノミクス ;"Reduced thermal tolerance in a coral carrying CRISPR-induced mutations in the gene for a heat-shock transcription factor" Cleves PA [..] Bay LK, Pringle JR. PNAS 2020-11-09
[出典] "Democratising high performance computing for bioinformatics through serverless cloud computing: A case study on CRISPR-Cas9 guide RNA design with Crackling Cloud" Bradford J, Joy D, Winsen M, Meurant N, Wilkins M, Wilson LOW, Bauer DC, Perrin D. PLoS Comput Biol. 2025-12-19. https://doi.org/10.1371/journal.pcbi.1013819[所属] Queensland University of Technology (オーストラリア), Australian e-Health Research Centre CSIRO, Macquarie University, University of Sydney
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