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 DNAメチル化検出法は、癌の診断および再発のモニタリングに有力なツールとして研究開発が進められ、エピゲノム診断薬も登場している [#1]。しかしながら、既存の方法は多くの場合、時間と費用がかかり、特殊な技術を必要とする。一方で、CRISPR-Casシステム、特にCas12aの一本鎖DNAトランス切断活性(コラテラル活性)をベースとするバイオセンサーは、疾患診断のための正確でユーザーフレンドリーなプラットフォームのベースとされてきた [#2]
 重慶大学の附属病院の研究者達を主とする中国とオーストラリアの研究チームは今回、血漿中を循環している遊離DNA(cell-free fDNA: cfDNA)のメチル化を検出するCas12aベースの方法であるCRISPRメチル化DNA検出試験(CRISPR-Methylated DNA Detection Test: CRISPR-MeDNA法)を開発した。
 Amplification-free cancer diagnosis GA5mC修飾DNAは、メチル化部位、数、および間隔に依存して、Cas12aの切断酵素活性を著しく抑制することが明らかになった [グラフィカルアブストラクト引用右図上段参照]。同時に、非標的鎖(NTS)のメチル化は、標的鎖(TS)のメチル化よりもCas12aの活性をより強く抑制することも明らかになった。これは、NTSがCas12aによる標的DNAの切断に必須なステージであるRループ形成において重要な役割を担っているからである。AlphaFold3による構造モデリングとFRETアッセイから具体的に、5mC修飾DNAが引き起こすCas12a複合体の構造再編成が同定された [*]
 この機構をベースに、Cas12aとマルチプレックスガイドRNAを組み合わせることで、前増幅を必要とせずに、健康なドナーと癌患者のcfDNAの効果的な識別が実現した [Figure 5引用右図参照]。
 こうして、CRISPR-MeDNA法が癌診断において、5mC修飾cfDNAを迅速かつ簡便で費用対効果比の高いリキッドバイオプシーのツールであることが実証された。
[*] 補足
 cfDNAの対称およびヘミメチル化パターンが潜在的な腫瘍バイオマーカーとして特定されていることから、けんm旧チームはdsDNAのNTSまたはTSのヘミメチル化がCas12aの切断効率に及ぼす影響を評価した。
  • 2種類のヘミメチル化dsDNAグループが設計された。3CGはPAM遠位領域の近くに3つの5mC部位を含み、4CGはPAMの近くと遠位の両方に位置する4つの5mC部位を含む。
  • 全体的に、3つのCas12aバリアント間のメチル化DNAと非メチル化DNAのトランス切断活性の区別は、特にFnCas12aの場合、3CGグループよりも4CGグループの方が顕著であった。
  • 両グループにおいて、NTSのヘミメチル化は、TSヘミメチル化よりも、3つすべてのCas12aバリアントのトランス切断活性に対してより強い阻害効果を示した。
  • 特に、4CG群では、反応開始から約25分後にAsCas12aのトランス切断活性に顕著な差が見られた。
  • さらに、dsDNAの場合、特定の5mC修飾によって引き起こされる過度の剛性や不適切な屈曲がNTSの解離を遅らせ、FRETで検出された構造変化にもかかわらず、トランス切断部位へのアクセスを制限する可能性があった。
  • その結果、Cas12aのトランス切断活性化に不可欠なRループ形成の構造的前提条件が損なわれる。
  • これらの知見を総合すると、DNAメチル化はCas12aのトランス切断部位へのNTSの結合を阻害することで、Cas12aのトランス切断活性化に先立ってCas12aの構造変化を引き起こすと考えられる。
[#]
  1. 日本では、 東北大学と理研ジェネシスが共同開発したリアルタイムPCR法をベースとするOncoGuide™ EpiLight™ メチル化検出キットが承認されている [出典:大腸がんのエピゲノム診断薬 DNAメチル化検出キット「OncoGuide™ EpiLight™メチル化検出キット」の保険適用のお知らせ。東北医療系メディア「ライフ」ニュースルーム 2025-06-02] https://www.life.med.tohoku.ac.jp/newsroom/press/34536/
  2. crisp_bio 2020-02-15 CRISPRによる核酸検出・診断(DETECTRとSHERLOCK)https://crisp-bio.blog.jp/archives/7449195.html
[出典] "Amplification-free cancer diagnosis based on inhibition of Cas12a activity by site-specific 5mC-modified cfDNA" Yang F, Xu C [..] Li R, Deng F, Xiang T. Nucleic Acids Res. 2025-12-17. https://doi.org/10.1093/nar/gkaf1383 [所属] Chongqing University Cancer Hospital (中国), The First Affiliated Hospital of Chongqing Medical University, Institute of Image Processing and Pattern Recognition/Shanghai Jiao Tong University, Graduate School of Biomedical Engineering/University of New South Wales (オーストラリア)
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