[注] SAVED(SMODS-associated and fused to various effector domains)
細菌やアーケアに見られるタイプIII CRISPRシステムは、外来RNAを検出すると、通常、環状テトラアデニル酸(cA4)などの環状オリゴアデニル酸セカンドメッセンジャーを生成する [#1] 。このセカンドメッセンジャーは補助的なエフェクタータンパク質を活性化し、宿主の多様な免疫応答を引き起こす。その中で、Calp(CRISPR associated Lon protease / CRISPR関連Lonプロテアーゼ)システムは、CalpL(Calp Lonプロテアーゼ)がSAVEDタンパク質のセンサードメイン内のcA4に結合することで、感染に対する転写応答を引き起こすシステムである。その結果、フィラメント形成とLonプロテアーゼドメインの活性化が起こり、抗シグマ因子CalpTが切断されてCalpS(Calpシグマ因子)が放出され、転写リモデリングが進行する [#2, 3]。
英国セント・アンドリューズ大学の研究チームは今回、好熱性ウイルスがCalpLのSAVEDドメインを、タイプIII CRISPRシステムに対する抗CRISPRタンパク質であるAcrIII-2として利用し、cA4を分解することを、明らかにした。
AcrIII-2二量体はcA4を挟み込み [PDBエントリー引用右図参照]、共通の活性部位でCalpLによく似たメカニズムを用いて短い直鎖状産物へと分解する。その結果、in vitroにおいて様々なcA4活性化エフェクターが阻害される。
AcrIII-2二量体はcA4を挟み込み [PDBエントリー引用右図参照]、共通の活性部位でCalpLによく似たメカニズムを用いて短い直鎖状産物へと分解する。その結果、in vitroにおいて様々なcA4活性化エフェクターが阻害される。 これは、リングヌクレアーゼ活性を有するウイルスにコードされたSAVEDドメインの初めての例であり、ウイルスと細胞防御の複雑な相互作用を浮き彫りにした。
[構造情報] PDB 9R8S: A viral SAVED protein with ring nuclease activity subverts type III CRISPR defence (1.79 Å)
[補足] 好熱性ウイルス由来AcrIII-2の発見
研究チームは、ウイルスによってコードされるタイプIII CRISPRに対抗する抗CRISPRタンパク質(Acr)のカタログを拡張するために、Millardデータベースのファージゲノムで短いCARFまたはSAVEDを含むタンパク質を検索した。この検索により、好熱性ウイルスであるThermocrinus Great Boiling Spring virus(TGBSV)によってコードされる単一の候補タンパク質が得られた。この230アミノ酸タンパク質は、タイプIII CRISPRプロテアーゼCalpLのSAVEDドメインに密接に関連していた。
これまでにCalpLの2つの相同遺伝子が報告されている。Sulfurihydrogenibium spp.由来のSsCalpL [#2]とCandidatus Cloacimonas acidaminovorans由来のCcaCalpLである。ここでは、ウイルスタンパク質が環状テトラアデニル酸(cA4)に結合して分解し、CalpLタンパク質のリングヌクレアーゼ活性に似た線状生成物を生成することを実証した。結晶構造は、cA4を挟み込むコンフォメーションと整合する二量体構造を示しており、cA4は両方のサブユニットの残基によって切断される。研究チームはこのタンパク質を、AcrIII-1に倣い、AcrIII-2(タイプIII cA4シグナル伝達防御システムの第2の抗CRISPR)と名付けた。
[#] 参考crisp_bio記事
- 2024-06-17 [最近の研究動向] CRISPR-Cas系における環状オリゴアデニル酸シグナリングの役割.
- 2022-12-03/2024-09-01 環状ヌクレオチド活性化CRISPRプロテアーゼによる抗ウイルス性シグナル伝達.
- 2024-10-14 タイプIII CRISPR-Casシステムの補助的エフェクターの一種であるLon-SAVEDプロテアーゼの構造と機序
[WhiteチームからのタイプIII CRISPRシステムに関連するcrisp_bio記事]
- 2025-07-20 タイプIII CRISPR-Cas防御におけるSAM-AMPリアーゼ.
[出典] "A viral SAVED protein with ring nuclease activity degrades the CRISPR second messenger cA4" Orzechowskin M [..] White MF. (bioRxiv 2025-06-01) Biochem J. 2025-11-10. https://doi.org/10.1042/BCJ20253271 [所属] University of St Andrews (英国)
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