神経細胞核内封入体病(NIID)[#] は、ヒト特異的NOTCH2NLC 遺伝子の5’非翻訳領域における伸長したGGCリピートによって引き起こされる成人発症の神経変性疾患である。その遺伝子編集を介した遺伝子治療に対して、NOTCH2NLC遺伝子とそのパラログ間の高い配列類似性が大きな課題となっている。
中南大学や曁南大学を主とする中国の研究チームは今回、NOTCH2NLC における伸長したGGCリピート配列を、高い相同性を示すNOTCH2/NOTCH2NL ファミリー遺伝子(この遺伝子座における配列差異は2%未満)へのオフターゲット効果なしに正確に除去するCRISPR/spCas9ベースの遺伝子編集戦略を開発した。
研究チームは、編集精度を確保するため、NOTCH2NL パラログおよびNOTCH2 との配列相同性が最小限に抑えられたsgRNAを設計し、さらにデュアルsgRNAアプローチを採用した。
研究チームは、関連遺伝子の配列比較からGGCリピートを挟む2つのミスマッチ領域を特定し, それらを標的可能なsgRNAsのペアを評価したのである [Supplementary Figure 1引用右図参照]。
研究チームは、関連遺伝子の配列比較からGGCリピートを挟む2つのミスマッチ領域を特定し, それらを標的可能なsgRNAsのペアを評価したのである [Supplementary Figure 1引用右図参照]。 CRISPRーCas9とsgRNAペアによる遺伝子編集を、NOTCH2NLC において正常なGGCリピートまたは伸長したGGCリピートを有するHEK293細胞、NIID患者由来の人工多能性幹細胞(iPSC)、神経前駆細胞(NPC)、さらに、既に確立されているトランスジェニックNIIDマウスモデルを含む複数のモデルにおいて、その有効性、特異性、安全性を体系的に評価した。
ここで重要なことは、選択したsgRNAの組み合わせによって実現した標的GGCリピートの除去が、ポリGタンパク質レベルを著しく低下させ、NIIDに関連する神経病理学的、分子生物学的、行動学的表現型を有意に改善したことである。また、大規模な染色体再編成や意図しない変異は検出されないことも確認された。
こうして、オフターゲットリスクを最小限に抑えながら、リピート伸長疾患に対する実行可能なゲノム編集戦略が実証され、NIIDに限らず、ハンチントン病、脆弱X症候群、筋強直性ジストロフィーなどを含むリピート伸長疾患全般への取り組みにおける新たなパラダイムが提示された。
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- "神経核内封入体病(neuronal intranuclear inclusion disease; NIID)" 曽根 淳. 臨床神経学. 60巻10号 (2020:10) pp. 653-662. https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/060100653.pdf
[出典]
- "Precise excision of expanded GGC repeats in NOTCH2NLC via CRISPR/Cas9 for treating neuronal intranuclear inclusion disease" Xie N, Pan Y [..] Li S, Li XJ, Liu Q. Nat Commun. 2026-01-13. https://doi.org/10.1038/s41467-026-68385-5 [所属] Central South University (Xiangya Hospital; Centre for Medical Genetics & Hunan Key Laboratory of Medical Genetics), Jinan University (Guangdong Provincial Key Laboratory of Non-human Primate Research), University of South China (Multi-Omics Research Center for Brain Disorders/The First Affiliated Hospital/Hengyang Medical School), Zhongnan University of Economics And Law (School of Statistics and Mathematics), Lingang Laboratory
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