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 ヒト大脳皮質における神経新生は、出生前の限られた期間に特化して進行する進化的に保存された過程を辿る。その間に放射状グリア(radial glia: RG)神経幹細胞から多様な大脳皮質細胞が形成される。興奮性ニューロン、オリゴデンドロサイト、アストロサイト、嗅球介在ニューロン、そして最近特徴づけられた大脳皮質介在ニューロンの集団 [Delgado et al., Nature 2021]である。このRGの自己複製と分化、そして異なる細胞運命間のバランスは、転写因子(TF)回路によって調整される複雑な遺伝子プログラムによって制御されている。ヒト皮質発達における遺伝子制御ネットワークの活動を測定する技術は進歩しているものの、ヒトRG系譜の発達におけるTFとエフェクター遺伝子の役割を評価するには、機能研究が必要とされている。
 今回、UCSFのAlex Pollen助教授を責任著者とする Nature 誌刊行論文では、細胞運命ダイナミクスを高感度に識別できるヒト初代培養系を確立し、遺伝子にCRISPR干渉(CRISPRi)で摂動を与えるモードのPerturb-seq*を適用して、ヒト大脳皮質RG系譜で強く発現する44の転写因子を抑制した場合の転写および細胞運命への影響を測定・解析した結果が報告されている。
[*] 参照:CRISPR関連文献メモ_2016/12/19 [第1項] Perturb-seq: プール型遺伝子スクリーンのスケーラブルなscRNA-seqプロファイリングによる分子回路分析法 
  • ヒト初代細胞培養のアプローチを拡張して、均質なRG集団中の転写因子を標的とし、成長因子を除去することで大脳皮質神経新生、細胞運命選択、および早期サブタイプの規定を実現した。
  • Pertub-seqの単一細胞スクリーニングにより、大脳皮質発生においてこれまで報告されていなかったZNF219 の神経分化抑制における役割、ヒトの興奮性ニューロン新生と抑制性ニューロン新生のバランス制御における NR2E1 と ARX の相反する役割、および下流転写補因子 LMO1 の転写抑制を介して介在ニューロン・サブタイプの規定を保護するARX の役割が明らかになった。
  • 異なる摂動下で調節不全に陥った遺伝子群を交差解析した結果、神経発達症(neurodevelopmental )および精神神経疾患(neuropsychiatric disorders)への関与が知られている複数の転写因子の下流に位置するハブとして機能する収束性エフェクター遺伝子候補が明らかになった。
 CRISPRiとバーコードによる細胞系譜追跡を組み合わせることで、転写因子に対する摂動を介して、個々のRG系譜の可塑性と発生のテンポを改変できる可能性が示された。また、並行して行ったアカゲザルを対象とするスクリーニングの結果と併せて、霊長類全体にわたる皮質RG系統の進行を制御する保存されたメカニズムが明らかにされるに至った。
[出典] "Dissecting gene regulatory networks governing human cortical cell fate" Ding JW [..] Pollen AA. Nature 2026-01-21. https://doi.org/10.1038/s41586-025-09997-7 [所属] UCSF (The Eli and Edythe Broad Center of Regeneration Medicine and Stem Cell Research; Neurology; Neurological Surgery; Anatomy; Psychiatry and Behavioral Sciences; Weill Institute for Neurosciences)
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