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[注] PARP (Poly(ADP-ribose) polymerase / ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ);PARPトラッピングは, PARP阻害剤 (PARPi) の主要な作用機序であり, PARPiがPARPをDNA損傷部位にトラップする作用を意味する。
 インペリアル・カレッジ・ロンドンの腫瘍学を率いるIain McNeish教授を責任著者とするCell Reports Methods 誌刊行論文にて、PARP1トラッピングの低下がPARPi耐性の獲得と相関することが報告されている。
 ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ阻害剤(PARPi)は、卵巣高異型度漿液性癌(ovarian high-grade serous carcinoma: HGSC)、特に相同組換え欠損腫瘍の治療に革命をもたらした。しかし、PARPiに対する耐性の出現が重大な課題であり、患者の50%以上が3年以内に再発する。一方で、PARPiの作用をもたらすPARPトラッピングのメカニズムについては、現在の実験手法では解像度とスループットが不足しているため、十分に解明されていない。
 この課題に対処するため研究チームは、OVCAR-4ヒト卵巣癌細胞株において、CRISPR-Cas9<D10A>ニッカーゼを利用して、内因性PARP1のN末端とC末端にそれぞれEGFPとmCherryFPをノックインする二重標識により、分子内蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に基づくPARP1トラッピングのバイオセンサーを開発した [グラフィカルアブストラクト 参照]。
 このバイオセンサーを蛍光寿命顕微鏡(Fluorescence Lifetime Imaging Microscopy: FLIM)で観察することで、PARPトラッピングの動態をリアルタイムかつ単一細胞レベルで解析することが可能になる。こうして、用量依存的なPARPトラッピングを捉え、臨床的に承認されている4種類のPARPiのトラッピング効率を検証し、in vitroおよびin vivoにおいてPARPi耐性モデルにおけるトラッピングの低下を確認した。
 このバイオセンサーは、PARPi耐性メカニズムに関する重要な知見を提供し、卵巣がん患者に対するより効果的な治療法の開発と個別化治療の進展に寄与するツールである。
[出典]
  • "Assessing PARP trapping dynamics in ovarian cancer using a CRISPR-engineered FRET biosensor" Marks D [..] McNeish IA. Cell Rep Methods 2025-12-30/2026 Jan. 
    https://doi.org/10.1016/j.crmeth.2025.101270 [所属] Imperial College London (Ovarian Cancer Action Research Centre; Physics; Chemistry) (英国), Francis Crick Institute.
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