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2026-04-14 Cell Genomics 誌刊行論文紹介Preview記事の書誌情報などを以下に追記
[出典] "Revealing cancer glycome drivers using CRISPR activation screens" Decloquement M, Macauley MS. Cell Genom. 2026-04-08.
https://doi.org/10.1016/j.xgen.2026.101215 [所属] University of Alberta (Dept Chemistry; Dept Medical Microbiology and Immunology)
  • Wisnovskyらは、ゲノムワイドCRISPRaスクリーニングを介して、細胞表面グリコシル化の調節因子を同定しました。このアプローチの強みは、基礎発現レベルが低いにもかかわらず、強い機能的影響を及ぼす可能性のある遺伝子を明らかにできる点にあります。
  • 具体的には、シアル酸結合性免疫調節因子Siglecの癌関連リガンドの発現を亢進させる遺伝子ネットワークが発見されました。
  • また、腫瘍関連過剰シアル化とSiglecリガンド発現の根底にある遺伝子競合と冗長性が明らかにされました。
  • こうして、糖鎖リモデリングを単一の要因による事象ではなく、動的なネットワークベースのプロセスとして捉え直し、将来の免疫療法および精密腫瘍学戦略に重要な示唆を与える結果となりました。
2026-02-03 Cell Genomics 誌刊行論文に準拠した初稿
[注] グライコーム (glycome):ある生物の持つ全ての糖鎖 (glycan / グリカン) を網羅したものであり、グライコミクス (glycomics) は、特定の細胞型または生物におけるすべての糖鎖構造の体系的な研究であり、糖鎖生物学のサブセットになる [Wikipediaより]
 多くの癌で、シアリン酸含有糖鎖(sialic acid-containing glycan)の発現が亢進している。これらのオリゴ糖は、免疫細胞上の阻害性シアリン酸結合免疫グロブリン様レクチン(sialic acid-binding immunoglobulin-like lectin:Siglec / シグレック)受容体と結合し、癌細胞が免疫監視を回避することを可能にすることが知られている。しかし、このプロセスの基盤となる遺伝学的メカニズムは、まだ十分に解明されていない。
 ブリティッシュコロンビア大学のSimon Wisnovsky助教授が率いる研究チームは今回、機能獲得型CRISPR活性化(CRISPRa)スクリーニングを実施し [グラフィカルアブストラクト下段参照]、シグレック結合性グリカンの発現を制御する遺伝学的経路を解明するに至った。
 シグレック・リガンドの発現は、ガラクトース残基のα2-3シアリル化とGlcNAc化を触媒する遺伝子間の遺伝的競合によって制御される。癌グライコームのリモデリングは、シグレック・ファミリーへの糖鎖の特異的かつ強力な結合を促進するところの"professional ligands"の過剰発現によっても促進される。一方で、CD24遺伝子の発現は、阻害性受容体シグレック-10の細胞表面への結合には遺伝的に必須ではない。さらに、神経膠腫細胞における免疫回避の潜在的なドライバーとして、硫酸基転移酵素GAL3ST4が同定された。
 こうして、癌関連糖鎖形成に関する独自のゲノムアトラスが構築され、癌免疫療法にすぐに応用可能な標的が同定されるに至った。
[出典]
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