海洋生態系は、気候変動などの人為的影響により、急速に混乱に陥っている。海水温の上昇は、病原菌の発生を促し、有害な藻類ブルーム(水の華)を増加させ、サンゴにストレスを与える。これらは海洋生態系、人間の健康、そして養殖産業に深刻な影響を及ぼす可能性があり、One Health(ワンヘルス)*の重要な課題となっている。
[*] ヒト、動物、環境の健康(健全性)に関する分野横断的な課題に対して、関係者が協力し、その解決に向けて取り組むことを、ワンヘルス・アプローチと呼ぶ [厚生労働省 報道・広報「~ヒト、動物、環境の健康を~ 「ワンヘルス(One Health)」ってなぁに?」]
海洋生態系について、主要な海洋生物をモニタリングすることで貴重な知見が得られるが、現在の方法は多くのリソースを必要とし、解像度が低く、また十分な頻度で展開することが困難である。 ハーバード大学のWyss研究所の創設・コア研究者でもあるMITのJames J. Collins教授と、Wyss研究所のPeter Q. Nguyen研究主幹を責任著者とするNature Sustainability 誌刊行論文にて、海洋生物のDNAとRNAの検出に向けた低コストで現場で展開可能なCRISPRバイオセンシングプラットフォームが紹介されている。
- 環境バイオサーベイランスにおけるCRISPR診断のプログラム可能性を活用し、気候に関連する3つの指標、すなわちビブリオ属菌、シュードニッチア属菌、そして熱ストレスを受けたサンゴにおいて、その汎用性が実証されている。
- ポータブルな3Dプリント製プロセッサとインキュベーター・デバイスにより、フィルターで捕捉したサンプルを温度制御下で直接処理することができる。
- 凍結乾燥試薬、ラテラルフロー式読み取り装置、スポイトによる操作、そして2段階のマルチプレックス・ワークフローにより、現場での即応性が向上し、実験器具を必要とせず1時間以内に結果が得られる。
- 標準病原体と環境海水を用いたベンチマーク試験により、海水耐性と、フィルター1枚あたり108コロニー形成単位(CFU)のビブリオ菌の検出が確認された。これは、ろ過サンプル1リットルあたり1マイクロリットルあたり102コピーに相当する。
- この分散型プラットフォームは、日常的なモニタリングの障壁を低減し、生態系の撹乱に関する早期警告を提供するとともに、海洋分野におけるワンヘルス・イニシアチブを支援する。
[出典]
- "A field‑deployable CRISPR-based biosensing platform for monitoring marine ecosystems" Kim N [..] Collins JJ, Nguyen PQ. Nat Sustain. 2026-01-27. https://doi.org/10.1038/s41893-025-01752-0 [所属] Wyss Institute for Biologically Inspired Engineerin/Harvard University, (Institute for Medical Engineering and Science; Dept. Biological Engineering)/MIT, Broad Institute of MIT and Harvard, Nicholas School of the Environment and Department of Biology/Duke University, (Medical Physics; Biochemical Engineering; Medicine)/University College London (英国)
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