(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/03/03

  1. [論文] 化学修飾したオリゴヌクレオチド(ODN)が、TALENとCRISPR/Cas9によるゲノム編集の効率と柔軟性を改善する:Jean-Paul ConcordetCarine Giovannangeli(Museum National d’Histoire Naturelle, Paris)
    • 相同組換え修復(HDR)による最適なノックイン条件を体系的に実験評価:ssODNとdsODN;ホスホロチオエート(S化)と固定化核酸(locked nucleic acids:LNA);化学修飾する塩基の種類と位置;ノックインする配列の長さ;ヌクレアーゼによるゲノム切断位置とノックイン位置の間隔
    • S化ssODNが有効;100bpより長い配列のノックイン実現(ヒトU2OS細胞の場合でノックイン効率20〜50%);切断位置とノックイン位置の間隔は8〜20bpと柔軟;U2OS細胞株とRPE1細胞株およびラットとマウスについて、ゲノムが改変された細胞の効率的分離を実現;マウスのROSAローカスへのホモ接合型loxPサイト挿入を実現.
    • これまでに報告されていたS化オリゴヌクレオチドの毒性は、見られなかった.
    • 不正確なノックインは非対称におこり(indelsが5’末端に偏って生じ)、一本鎖のアニーリングが2段階で起こることが示唆された.
  2. [論文] スプライシング阻害剤Pladienolide Bの標的分子同定:Magdy M. Mahfouz (King Abdullah University of Science and Technology)
    • Pladienolide B(以下、PB)は、mRNA前駆体のスプライシング阻害を介して抗腫瘍活性を示す天然由来マクロライドである.今回、CRISPR/Cas9技術によって、PBのスプライソームにおける標的分子同定を実現した.
    • 具体的には、HEK293T細胞において、スプライシング因子SF3Bタンパク質複合体を構成するサブユニットを標的とするsgRNAを設計・作出し、サブユニット遺伝子に変異を導入し、SF3b1サブユニットに変異が導入されたHEK293T細胞が、PBに対して顕著な薬剤耐性を示すことを見出した.
  3. [論文] CRISPR/Cas9による精細胞特異的遺伝子改変:Yuxuan WuJinsong Li(Shanghai Institutes for Biological Sciences)
    • シナプトネマ複合体構成タンパク質をコードするScp3 遺伝子を標的とする精細胞特異的遺伝子を1ステップで改変.
    • はじめに、Cas9発現を誘導するHspa2 プロモーターを含むプラスミドを前核に注入し、Csa9が精細胞特異的に発現するトランスジェニックマウスを作出し、さらに、Scp3 を標的とするsgRNAを恒常的に発現しているトランスジェニックマウスを作出.
    • オスのファウンダーは不妊であり、メスのファウンダーから生まれたオスも不妊であった.
    • CRISPR/Cas9は、成体組織特異的な遺伝子機能を解析するに有用な手段である.
  4. [NEWS] CRISPRによるハイスループット・スクリーニング:Laurie Winkless (Science communicator)