合成生物学は、持続可能なバイオマニュファクチャリングのための堅牢な微生物細胞工場の構築を目指している。その中で、大型ポリシストロン性発現カセットをゲノムに効率的に組み込み、遺伝子発現を柔軟に制御することが課題になっている。この課題解決に向けて、江南大学の研究チームが、タイプI-F CASTシステムTn6677をベースに、プログラム可能なツールMUSCULAR-CAST (MUlti-Site CUt-burden, LARge-fragment genomic integration using CRISPR-ASsociated Transposases) を開発した。
MUSCULAR-CASTを使用することで、さまざまなサイズのポリシストロニック発現カセット(1〜10K)の効率的なゲノム統合が実現された。その中で、母乳に含まれるヒトミルクオリゴ糖の一種である3-フコシルラクトース(3-FL)シャーシ株(chassis strain)の構築に成功し、プラスミド発現株と比較して同様の収量とより良い成長を実現した。また、プラスミド発現株よりも高い酵素活性を持つ、プラスミドフリーでPET分解活性を示すクチナーゼを発現する株も構築された。[グラフィカルアブストラクト左側参照]
一方で、MUSCULAR-CASTのターゲティングモジュールに基づいて遺伝子抑制ツールTn-CRISPRiを開発し、多様なPAM配列にわたる高い単一遺伝子抑制とほぼ完全な二重遺伝子抑制(98.6〜99.8%)を達成した。 Tn-CRISPRiを用いて、3-FL生合成と競合する遺伝子、あるいは成長に必須ではない遺伝子17個を抑制したところ、浸透圧調節ペリプラズムグルカン生合成タンパク質H(mdoH)と運動性タンパク質A(motA)のノックダウンにより、3-FLの力価がそれぞれ2.79倍と4.4倍に上昇することが、明らかになった。[グラフィカルアブストラクト右側参照]
こうして、MUSCULAR-CASTとTn-CRISPRiがゲノム統合と転写制御のための効率的なツールであり、合成生物学における高性能なシャーシ株のためのスケーラブルなフレームワークを提供することが、示された。
[関連crisp_bio記事]
- 2023-04-09 タイプI-F CASTを利用しDSBを回避しつつヒト細胞内における大規模DNA配列ノックインを実現. https://crisp-bio.blog.jp/archives/32022537.html
- 2026-01-13 CRISPR関連トランスポザーゼ (CAST) に影響を及ぼす宿主因子の同定による微生物ゲノム編集の高度化. https://crisp-bio.blog.jp/archives/39981882.html
[出典]
- "Gene insertion and transcriptional regulation of Escherichia coli based on CRISPR-associated transposases" Wu J [..] Zhang K. Int J Biol Macromolecules. 2026-01-31. https://doi.org/10.1016/j.ijbiomac.2025.149850 [所属] Jiangnan University (Biotechnology)
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