ミトコンドリア遺伝子疾患は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の変異を標的とするCRISPR-Cas GEによって対処できる可能性がある。しかしそれに対して、CRISPR-Cas9 GEのガイドRNA(sgRNA)をミトコンドリアに送達することが、依然として課題として立ち塞がっている。浙江大学を主とする中国の研究チームは今回、in silico解析と実験検証を組み合わせて、ミトコンドリアに局在する RNA の主要要素を特定し、それらを用いて最適化されたCRISPR-Cas9ミトコンドリア治療ツールを構築することに成功した。
- バイオインフォマティクス解析ツールを組み合わせて、ミトコンドリア内の長鎖非ノンコーディングRNA(lncRNA)とRNA結合タンパク質(RBP)のネットワークを解明し、これらの lncRNA をミトコンドリアに輸送する役割を担う特徴的な RNA 認識モチーフ (RNA recognition motifs: RRM) を同定した [論文Figure 1A参照]。
- 続いて、R T-qPCRによる検証において、一連のlncRNAsの中でミトコンドリアへの局在能において最も高いlncRNAとしてRP11-46H11.3 を同定し [論文Figure 1 C/G引用右図参照]、その包括的解析から、RP11-46H11.3の高いミトコンドリア局在効率をもたらすミトコンドリア標的配列(RNA mitochondrial targeting sequence: RMTS)、30 ntの長さのST2-RNA、を特定した。
- ST2-RMTSをsgRNAに融合させることで、ミトコンドリア内のmtDNAにRNA誘導性二本鎖切断(DSB)を誘導するRMTS-CRISPRツールを開発・検証した。
- RMTS-CRISPRは、m.3243A>G変異mtDNAと正常型mtRNAからなるヘテロプラズミックなミトコンドリアを帯びた細胞モデルにおいて最大26.37%、in vivoでは最大26.79%の正常型へのシフト*を達成し、
また、ミトコンドリアの機能を回復させた [グラフィカルアブストラクト引用右図モデル図参照]。[*] Mito-TALENでのシフト効率は27.34%
こうして、RMTS-CRISPRを利用することで、ヘテロプラズミックmtDNA変異の修正、ひいては、CRISPRを基盤としたミトコンドリア遺伝子治療の可能性が広がることが、示された。
[関連crisp_bio記事]
- 2025-07-06 [論説] ミトコンドリア病治療法としてのミトコンドリアDNA精密編集技術の可能性. https://crisp-bio.blog.jp/archives/38881171.html
[出典]
- "A CRISPR-based mitochondrial gene therapy tool derived by engineering guide RNAs" Wang Y, Su X, Chen Y [..] Liu Y, Lin W, Lin A. Cell Rep. 2026-02-11/02-24. https://doi.org/10.1016/j.celrep.2026.116958 [所属] Zhejiang University, Zhejiang University School of Medicine, Wenzhou Medical University
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