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 RNAワールド仮説は、初期地球において生命誕生前の化学反応によって形成されたRNAオリゴマーのランダム配列プールから、自己複製を駆動する触媒活性を備えたRNA配列(リボザイム)が出現したと仮定している。確かに、RNAポリメラーゼ・リボザイムはRNAを複製できるが、天然に存在するRNAポリメラーゼ・リボザイムは、その大きなサイズと構造の複雑さから、自発的に創発したとは考えにくい。既存のポリメラーゼリボザイムのサイズのRNA配列は、極めて大規模な配列のプールにおいてさえ極めて稀であり、非生物的に形成されることが観察されているRNAオリゴマーの長さの範囲をはるかに超えているのである。そこで、MRC Laboratory of Molecular Biologyの"Evolution of novel biopolymer"グループリーダーPhilipp Holligerが率いる英仏の研究チームは、ポリメラーゼ活性を、生成も複製も容易なより短いRNAモチーフが帯びている可能性を考え、ポリメラーゼ・リボザイムの機能に必要な最小限のRNA配列長を定義するため、RNAの鋳型重合のためのランダム配列プールからde novo選択を行った。
 表現型要件を緩和し、可能な限り短いモチーフを単離するために、弱アルカリ性共晶氷中での凍結によってRNAポリメラーゼ活性が促進され、リボザイムが安定化し、基質が濃縮されるという過去の観察結果 [Attwater et al., Nat Commun 2010]を活用した。なお、共晶氷は、地球初期の寒冷な環境を模してもいる。
 研究チームは、生命誕生前に(prebiotically)に利用可能であった可能性のあるRNA基質の長さの範囲のうち、トリヌクレオチド三リン酸基質(以下、トリプレットと呼ぶ)に注目した。トリプレット基質は、高度に構造化されたRNAテンプレートの複製を可能にし、複製サイクルにおける鎖の再アニーリングを阻害する。トリプレット基質はまた、RNA自己複製におけるオープンエンドな進化の前提条件である、合成産物の自由な配列変異を損なうことなく、ポリメラーゼの表現型要件を緩和する。
 ~6兆通り(~6 x 10<12>) という膨大なランダムなRNA配列のプールから選択圧を徐々に強めていくことで、自己複製可能な45ヌクレオチドのポリメラーゼ・リボザイムであるQT45を発見するに至った。
 QT45は、トリプレット基質を使用して、一般的なRNAテンプレートRNA合成を触媒する。
ランダム・トリプレット・プールを使用してヌクレオチドあたり94.1%の忠実度で相補鎖を合成することも、定義された基質を使用して自身のコピーを合成することもできる。すなわち、自己複製ができる。いずれにおいても、72日間の実験で得られた収率は約0.2%にとどまっているが、自己複製が一度でも成立すれば、化学反応から生命の誕生への道が開かれること、また、サイズの小さなRNAポリメラーゼ・リボザイムはランダムに生成されるRNA配列空間に大量に存在する可能性が高いことから、QT45は、生命誕生の機構を解く鍵をもたらしたとも考えられる。
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