[注] ニュートリゲノミクス (nutrigenomics = nutritional genomics);B3はNAD(H) (nicotinamide adenine dinucleotide) and NADP(H) (nicotinamide adenine dinucleotide phosphate)の前駆体
ビタミンは必須代謝物であり、外部から摂取する必要があるが、現代ではビタミンは広く入手可能になったため、必要に応じて摂取することが可能になっている。Gladstone Institute/UCSF/Arc Institute のIsha H. Jain准教授が率いる研究チームは今回、微量栄養素の調節に反応する単一遺伝子疾患を体系的に特定するための栄養ゲノミクスの枠組みを開発した。
様々なビタミンB2およびB3の濃度下でゲノムワイドCRISPRスクリーニングを実施した結果、個々の高用量ビタミン補給に反応し救済可能な遺伝性疾患、ひいては、疾患遺伝子が数十個明らかになった。
ビタミンB2のゲノムワイドCRISPRスクリーニングでは、遺伝性B2欠乏症の複数の原因が特定され、GPX4(グルタチオンペルオキシダーゼ4)欠乏症がin vitroおよびin vivoでB2欠乏に感受性があることが検証された。
ビタミンB3のスクリーニングでは、NAD(P)HX脱水酵素(NAXD)が最も多く検出された。この酵素は、NADH(6-ヒドロキシ-1,4,5,6-テトラヒドロニコチンアミドアデニンジヌクレオチド [NADHX])の異常な水和型を修復し、その欠損はヒトにおいて重篤な神経発達疾患を引き起こし、通常は生後数ヶ月以内に死に至る。
CRISPR-Cas9システムを利用してNaxd ノックアウト(KO)マウスを作出したところ、出生時は正常に見えたが、数日以内に死亡した。脳の病理学的および生化学的解析から、新生仔KO脳において、NADHXの蓄積、NAD+の枯渇、セリン生合成障害が観察され、ヒトの疾患が再現されていることが確認された。
このNAXD欠乏症モデルマウスにおいて、空間メタボロミクス、単核RNAシーケンシング(snRNA-seq)、および組織学的検査により、皮質および脳内皮細胞の脆弱性が特定された。また、ビタミンB3の摂取量が少ない食事は病状の進行を加速させたが、ビタミンB3のサプリメントはKOマウスの代謝不全を改善し、寿命を40倍以上延長した。
これらの知見は、今回、栄養ゲノミクスの枠組みが確立され、精密なビタミン介入による治療の可能性を実証している。
[出典]
- "Vitamin B2 and B3 nutrigenomics revealed a therapy for NAXD disease" Garg A, Blume SY, Huynh H [..] Jain IH. Cell 2026-02-25. https://doi.org/10.1016/j.cell.2026.01.022 [所属] Gladstone Institutes, UCSF, Cornell University, The University of Chicago, University of Texas Health Science Center, University of Florida, Arc Institute, South Texas Veterans Health Care System;グラフィカルアブストラクト参照
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