[*] CAST (CRISPR-associated transposon / CRISPR関連トランスポゾン)
バキュロウイルスは、巨大な二本鎖DNA昆虫ウイルス(≈134 kb)であり、昆虫細胞における異種多タンパク質複合体の高レベル発現 やワクチン産生に広く利用されている。バキュロウイルスはまた、HEK293T細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、肝癌細胞など、多様な哺乳類細胞種に効率的に導入し、一過性遺伝子発現を付与することができる。これらの特徴により、バキュロウイルスは、癌遺伝子治療、再生医療、ゲノム編集 、プライム編集のための多用途遺伝子送達ベクターとして利用可能である。
国立精華大学(台湾)化学工学部長Yu-Chen Hu教授が率いる研究チーム、2023年にScytonema hofmanni 由来のCAST(ShCAST)[#1] をベースにしつつ、CRISPR-Cas9やShCAST自身の弱点を克服し、大腸菌の高効率なゲノム工学ツールとして SHOT(ShCAST-based Optimized Transposition)を開発 [#2] していた。今回、そのSHOTをベースに、大腸菌における組み換えバキュロウイルスを担うシャトルベクターであるバクミド(bacmid)[*] の安定かつ高効率なCASTプラットフォームであるSHOT 2.0を開発し、新たな組み換えバキュロウイルス作製法を確立した。
[*] バクミド(bacmid)は、バキュロウイルスゲノム、大腸菌内で安定的に維持されるミニFレプリコン、およびTn7を介した転座のためのattTn7部位を含む、環状の細菌-昆虫シャトルベクターである。このシステムでは、Tn7アームに挟まれたGOIが、バクミドとTn7トランスポザーゼを発現するヘルパープラスミドの両方を保持する大腸菌DH10Bacに導入され、attTn7??? 部位での部位特異的な組み込みが可能になる。SHOTおよびSHOT2.0のベースになったShCASTは、
4つのコアタンパク質(Cas12k、TnsB、TnsC、およびTniQ)、およびガイドRNA(sgRNA)で構成され、トランスポゾンカーゴの搭載・輸送を可能にする [Figure 1の一部引用右図参照]。
4つのコアタンパク質(Cas12k、TnsB、TnsC、およびTniQ)、およびガイドRNA(sgRNA)で構成され、トランスポゾンカーゴの搭載・輸送を可能にする [Figure 1の一部引用右図参照]。 SHOT 2.0は、バクミド骨格内の所定の部位に14kb以上の大きなDNAカーゴを効率的に組み込むことができ、Bac-to-Bac®システムと連携してカスタマイズ可能な組換えバキュロウイルスを生成する。
研究チームはさらに、SHOT 2.0を用いて、プライム・エディターPE5maxをコードするオールインワン・バキュロウイルスを設計した。 このベクターを介したPE5maxは、HEK293T細胞において最大85.6%の効率を達成し、iPS細胞や肝癌細胞など、導入が困難な細胞種においても最大37.1%の効率で堅牢なプライム編集を実現した
[グラフィカルアブストラクト引用右図参照]。
[グラフィカルアブストラクト引用右図参照]。 こうして、ゲノム工学のプラットフォームとなる組み換えバキュロウイルスベクターを生成するためののSHOT 2.0 の有用性が実証された。
[出典]
- "CRISPR-associated transposon for programmable viral vector engineering and prime editing" Dang QT [..] Hu YC. Nucleic Acids Res. 2026-02-05. https://doi.org/10.1093/nar/gkag121 [所属] National Tsing Hua University (台湾), Vietnam National University Ho Chi Minh City (ベトナム)
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