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2026-03-11 論文責任著者のX投稿へのリンクを記事の最後に追加
2026-03-03 Nature Communications 誌刊行論文に準拠した初稿
[注] Perturb-seqはプール型CRISPRスクリーニングとscRNA-seqを組み合わせた技術である。当初、Broad研究所のAviv Regevら [2020年からGenentec副社長] と、UCSFのJonathan S. Weissmanらが、それぞれ2016年にCell誌掲載論文で使用した用語であった [Dixit, Parnas et al., Cell 2016-12-15Adamson B et al., Cell 2016-12-15] が、CRISPR-seqやCROP-seqなども含み総称的に使われているところもあるようだ。
 Genome Institute of Singaporeの主任研究員Wei Leong CHEW博士が率いるシンガポールの研究チームが今回 Nature Communications 誌刊行論文で紹介しているSpatial Perturb-Seq(本記事内で以下 Sp-PS と略す)は、単一細胞解像度の全(whole) トランスクリプトームプロファイル(細胞型の特定可能)、CRISPRバーコード(遺伝子摂動に紐づけられている)、空間座標、細胞間相互作用(微小環境)での全トランスクリプトーム、を同時に測定する。これらはすべて、単一のStereo-seq [Chen, A Liao S, Cheng M et al., Cell 2022-05-12] そして/またはXenium [Marco Salas et al., Nat Methods 2025-03-13] の実行を通じて行わる。
 Sp-PSによって、組織から細胞を分離することなく生体内の単一細胞において、遺伝子摂動に対する細胞自律的応答と非細胞自律的応答の双方を捉えることが可能になり、組織から分離された細胞を対象とするscRNA-seqでは捉えられない空間的構成と細胞間コミュニーケーションの双方について知見を得ることができる。また、Sp-PSは、シーケンシング・ベースとプローブ・ベースのいずれの空間処理技術とも互換性がある。
 Sp-PSによって、in situ および in vivo で複数の遺伝子を機能的にスクリーニングし、細胞タイプの表現を歪める細胞処理ステップをバイパスし、ノックアウトの細胞内および細胞間効果を特定し、調節不全の神経細胞間コミュニケーション経路の基礎となる候補遺伝子を特定することが、可能になった。
 具体的には、Sp-PSの戦略に則って、Cas9を発現させたマウスの海馬に、神経変性疾患のリスク遺伝子18種類を標的とするCRISPR-gRNA AAVライブラリー(遺伝子あたり3 gRNAsを使用)を投与し、海馬内組織における細胞自律的応答および細胞間微小環境への影響を明らかにした。 その結果、Lrrk2とBc1、Map2k6、Sparc、Dock10遺伝子間の新たな細胞内および細胞間相互作用を特定し、Lrp1シグナル伝達およびエフリン-Eph受容体相互作用における神経細胞間コミュニケーション経路の調節不全に関与する候補遺伝子を特定した。
[挿入図リスト]
  • Fig. 1: In vivo spatial perturb-seq of the adult mouse brain by intracranial injection of a barcoded AAV library.
  • Fig. 2: Analysis of cell-autonomous and non-cell autonomous effects of perturbations and cell-cell communication in hippocampal neurons.
  • Fig. 3: Spatial Perturb-Seq with probe-based Xenium.
[出典]
  • "Spatial perturb-seq: single-cell functional genomics within intact tissue architecture" Shen K [..] Chew WL. Nat Commun. 2026-02-21. https://doi.org/10.1038/s41467-026-69677-6 [所属] Genome Institute of Singapore/A*STAR (シンガポール), Nanyang Technological University, National University of Singapore
[関連crisp_bio記事]
[責任著者のW. L. Chew博士のX投稿を引用]

Wei Leong CHEW
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