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CRISPRaの多重化に内在するリスク - dCas9と転写活性化因子をめぐるgRNAs間の競合

2026-03-09
ブログ投稿のタイトルを「CRISPRaは、必ずしも標的遺伝子転写を活性化せず, むしろ抑制する場合がある」に改訂し、旧タイトルを副題化
2026-03-07 Cell Systems 誌刊行論文に準拠した初稿
 触媒活性を不活性化させたCas9(dCas9)をベースとする人工的な遺伝子転写活性化因子CRISPRaは、ゲノムワイドスクリーニング、バイオプロダクション、さらには治療開発に広く利用されている。CRISR技術一般と同様CRISPRaもガイドRNAのライブラリーを利用することで、多重遺伝子制御が可能なモジュール型と見られているが、実は、その多重化は問題を孕んでいる。
 2019年にbioRxiv から公開されたプレプリントでは、dCas9をベースにした転写抑制因子の場合、多重化するとgRNAsがdCas9を取り合うことで、一方のgRNAの標的に対する活性が抑制される「dCas9ボトルネック」と称する現象が発生するが、CRISPRaの場合は多重化に寛容であると、報告されていた [*]
 しかし、MITのDomitilla Del Vecchio教授Krishna Manoj Aravind院生は、今回、CRISPRaにおいても、異なるgRNAがdCas9と遺伝子転写活性化タンパク質をめぐって競合することで互いに干渉し合うこと、また、RNAレベルの上昇が活性化ではなく転写の抑制につながることをCell Systems 誌刊行論文において報告している。
 研究チームはまず、単一のgRNAを用いたシステムにおいて、標的遺伝子の活性化が入力gRNAおよびdCas9の濃度にどのように依存するかを調べ、gRNAおよび/またはdCas9の濃度の増加が標的遺伝子の活性化の低下につながることを明らかにした。
 次に、複数のgRNAが存在する場合、ある標的への入力gRNAによる活性化が「競合」gRNAの発現によってどのように影響を受けるかを調べた。その結果、競合がdCas9または活性化タンパク質のいずれかに親和性を持つ場合、標的の活性化は低下し、競合が両方のタンパク質に結合すると活性化はほとんど起こらないことが明らかになった。
 さらに、dCas9と転写活性化タンパク質のレベルの上昇が競合にどのような影響を与えるかを調べ、dCas9と活性化タンパク質に対する競合を考慮し、観察された効果を再現できる予測反応ネットワークモデルを構築した。
 最後に、予測反応ネットワークモデルを用いて、競合を利用したCRISPRaのオンターゲット活性化を最適化できることを実証した。

[出典]
[*]
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