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[注] MDM4は、N末端にp53結合ドメイン、C末端にRINGフィンガードメインを有し、p53腫瘍抑制タンパク質に結合およびその活性を阻害し、様々なヒトがんにおいて過剰発現する [日本版がんゲノムアトラスから]。一方で、TP53 の遺伝子産物p53の活性化が骨髄不全症を引き起こすとされている [AMEDプレスリリースから]
 骨髄不全症候群(bone marrow failure: BMF)は、造血障害と骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome: MDS)および白血病への進展リスクを特徴としている。
 St. Jude Children Research HospitalのBone Marrow Failure ProgramのディレクターであるMarcin W. Wlodarski博士が率いる米・独・仏の研究チームは今回多様なBMF表現型および低形成性MDSを有する血縁関係のない6例と、CRISPR-Cas9ゲノム編集を介した病因変異を解析した結果を、Blood 誌刊行論文にて紹介している。
 6例の発症年齢の中央値は10歳(生後4週間~53歳)であった。ゲノム解析により、MDM4遺伝子に生殖細胞系列ヘテロ接合性変異体が存在することが明らかになった。この中には、RNA-seqによって確認されたフレームシフト、ナンセンス、スプライスサイトによる早期切断を引き起こすヌル変異が4つと、ミスセンス変異が2つ含まれていた。ミスセンス変異のうち1つは、以前家族性BMF症候群と関連付けられていた。MDM4変異は、p53活性化の増強につながる機能喪失型であった。
 研究チームはCRISPR/Cas9を用いて、健康なドナー由来の造血幹・前駆細胞(HSPC)からMDM4を欠損させ、MDM4ハプロ不全HSPCはp53活性の上昇、コロニー形成能の低下、免疫不全マウスへの移植能の低下がもたらされることを、確認した。相補性研究により、p53結合ドメインとRINGフィンガードメインの双方が、MDM4を介した造血調節に必須であることが明らかになった。
 研究チームはさらに、交絡因子のない遺伝的背景における変異体の影響を研究するため、患者特異的なMDM4変異体をiPS細胞に導入した。MDM4変異体iPSCでは、赤血球系細胞および骨髄系細胞が著しく減少し、p21発現の上昇から明らかなようにp53活性の上昇が認められ、MDM4がp53を介して造血を制御していることが確認された。さらに、iPS細胞由来造血細胞のトランスクリプトーム解析により、p53経路の上方制御が明らかになった。
 こうして、MDM4欠損症がBMFの特徴と多様な造血症状を伴うTP53活性化症候群であることが確立され、また、造血恒常性維持におけるMDM4-p53軸の重要な役割を浮き彫りにされた。

[出典]
  • "MDM4 haploinsufficiency leads to P53-mediated bone marrow failure" Sharma R [..] Wlodarski MW. Blood 2026-02-27. https://doi.org/10.1182/blood.2024027180 [所属] Cleveland Clinic (米国), St. Jude Children's Research Hospital, RWTH Aachen University (ドイツ), University Hospital Regensburg, Zentrum für Humangenetik Tübingen, Evangelisches Klinikum Bielefeld-Bethel, Ulm University Medical Center,  Paris Cite University (フランス), Hopital Saint-Louis and Université Paris-Cité
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