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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[注] TPP(Thiamine diphosphate / チアミンピロリン酸)はビタミンB1(チアミン)の活性型である。
 作物収量の向上は、依然として重要な育種目標である一方、栄養価とストレス耐性を損う場合が多い。世界人口の増加と環境ストレスの増大により、安定した作物収量と栄養価の向上を両立させることは、持続可能な食料安全保障にとって極めて重要な目標となっている。ビタミンB1の活性型であるチアミンピロリン酸(TPP)は、コア代謝を調節し、ヒトの健康と植物のストレス耐性の両方を支える。
 中国とドイツの研究チームは今回、CRISPR-Cas9を介してイネTPPリボスイッチを編集*することで、複数の微量栄養素が増加し、同時に穀粒収量、耐寒性、およびいもち病抵抗性が向上することを Nature Communications 誌刊行論文にて紹介している。
[*] ビタミンB1合成の鍵となる酵素である OsTHIC の3'-UTRにあるTPPリボスイッチを編集
 メカニズム的には、これらの強化は光合成の促進、窒素利用効率の向上、そしてシステム全体の転写代謝リプログラミングにつながる。トマトにおけるホモログの編集でも同様の結果が得られ、このアプローチの一般化可能性が裏付けられた。
 このように、TPPレベルの調節は、持続可能な食料安全保障をトレードオフなく達成するために不可欠な、作物の生産性、栄養価、およびストレス耐性を相乗的に高める実行可能な戦略となる。

[出典] 
  • "Modulating TPP riboswitch activity simultaneously enhances crop yield, nutritional quality and stress tolerance" Li Y, Li K, Lu J, Bulut M [..] Shen S, Fernie AR, Leo J. Nat Commun. 2026-02-28. https://doi.org/10.1038/s41467-026-69730-4 [所属] Yazhouwan National Laboratory (中国), Hainan University, Shenzhen Institute of Advanced Technology, Max Planck Institute of Molecular Plant Physiology (ドイツ), Leibniz Institute of Plant Biochemistry
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