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 組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターとCRISPR/Cas9は、今や遺伝子治療の研究開発に広く用いられている。スタンフォード大学のMark A. Kay教授が率いる研究チームは今回、内在性DNAの二次構造がゲノム​​編集の結果に及ぼす影響に注目した。
 Kay教授らは先行研究で、rAAVベクターの相同組み換え(AAV-homologous recombination (HR))が、局所的なDNA構造と転写活性の影響を受け、RNA/DNAハイブリッド構造、すなわちRループがベクター標的化の重要な決定因子であることを示唆するエビデンスを得ていた [#1]。Rループは、新生RNAが鋳型DNA鎖にハイブリダイズする際に転写と共存して形成され、ゲノム安定性、転写、DNA修復の調節因子として、ますます注目されている。
 一方で、CRISPR/Cas9は汎用性の高いゲノム編集プラットフォームであるが、その効率はクロマチン構造、転写活性、DNA二次構造から、AAV-HRと同様な影響を受ける。ガイドRNA(gRNA)と標的DNAのアニーリングによって形成されるRループ様構造を介して、Cas9の活性の活性化 [#2] あるいは阻害 [#3] されることが示されているが 、内在性ゲノムRループがCas9を介した編集に及ぼす影響については十分に解明されていない。さらに、転写過程において、新生RNAはHRと関連付けられており、RループがHRの調節に関与していることが示唆されており、CRISPR/Cas9ゲノム編集中の相同組換え修復(HDR)の結果にも影響を与える可能性が示唆されている。
 そこで研究チームは、ゲノムのRループがin vitroおよびin vivoにおけるCas9を介したゲノム編集の結果の違いと関連しているかどうかを、マウス由来細胞とCas9を導入したトランスジェニックマウスにて、検証した。
  • マウスのアルブミン(Alb )遺伝子座とアクチン(Actb )遺伝子座において、Rループレベルが比較的低い領域と高い領域を標的とすることで、Rループ量が異なる部位間でインデル頻度が同程度であることが確認された。
  • 対照的に、増殖中の肝細胞由来細胞(HEPA1-6)では、Rループに富む部位における相同組換え修復(HDR)効率が低下し、生体内の静止期肝細胞では低下しなかった。Potential effects of endogenous RNA:DNA hybrids GA[グラフィカルアブストラクト引用右図参照]
  • RNaseH1過剰発現や薬理学的G1期停止誘導など、Rープレベルを低下させる操作は、これらのゲノム部位におけるHDRの増加と関連していた。
  • さらに、T細胞の活性化はRループ蓄積の増加と相関しており、これらが生体外ゲノム編集に影響を与える可能性を示唆している。
 これらの観察結果を総合すると、内因性Rループレベル、細胞周期ダイナミクス、相同組換え修復の効率性の間に予期せぬメカニズムの相互作用が明らかになり、RループがCRISPR/Cas9を介したゲノム編集の最適化における潜在的な障壁となることが明らかになった。

[出典]
  • "Potential effects of endogenous RNA/DNA hybrids on CRISPR/Cas9-mediated homology-directed repair" Puzo F [..] Mellins E, Kay MA. Mol Ther Nucleic Acids. 2026-02-27. https://doi.org/10.1016/j.omtn.2026.102880 [所属] Stanford University (Dept Genetics, Dept Pediatrics)
[#]
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