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 一部の国では、ゲノム編集植物製品の規制に、2012年に導入された「DNA二本鎖切断(DSB)を念頭に置いた部位特異的ヌクレアーゼ(Site-directed nucleas: SDN)をSDN-1、SDN-2、SDN-3の3段階に分類する手法」[Trends Biotechnol. 2013] が用いられている:
  • SDN-1 (削除):DNA修復テンプレートを導入しない;宿主細胞によるDNA修復はランダムとみなされ、通常は小さなヌクレオチドの欠失、追加、または置換が生じる。
  • SDN-2 (編集):標的DSBと共に、1つまたは少数のヌクレオチドの変化を除いて標的DNA配列と同一のDNA修復テンプレートを導入し、標的ヌクレオチド置換を伴うDSBの修復を誘導する。
  • SDN-3 (挿入):標的DSBと共に、より大きなDNA配列(例えば遺伝子)を含むDNA修復テンプレートを導入し、その結果、植物ゲノムの標的位置にDNA配列が挿入される。
 この単純な分類体系自体、各国の規制に混乱を招いたが、今や、過去10年間に開発されたゲノム編集技術の広範さと、急速に商業化が進むその技術に適合しなくなっているとして、今回、植物育種を手がけているオーストラリア、ベルギー、米国、および中国の企業が共同でNature Biotechnology 誌から問題を提起した。
 例えば、先進的なゲノム編集技術である塩基エディター(BE s)やプライム・エディター(PEs)は、そもそも、DSBを回避している。また、ゲノムDNAの配列を改変することのないエピゲノム・エディターによる育種も始まっている。さらに、ゲノム編集で得られた結果は、多くの場合、天然または従来型の交配・選抜で得られる結果と判別不可能である。
 多くの国では、すでにゲノム編集植物に対する成果に基づく規制基準の導入が始まっている。南北アメリカ大陸の大部分、ならびにアジア太平洋地域およびアフリカの一部では、ゲノム編集植物に対する規制政策において、一定の基準を満たす植物は遺伝子組み換え生物(GMO)規制の対象から除外または免除されている。これらの国では、植物の規制上の地位は、最終的な植物に外来DNAが存在しないかどうか、または「遺伝物質の新しい組み合わせ」が生成されているかどうか(国によって異なる)をチェックすることで決定される。ゲノム編集植物に編集プロセスで使用された外来DNAがない場合、またはゲノムに遺伝物質の新しい組み合わせがない場合、これらの管轄区域の規制当局は、その植物を従来の方法で育種された品種と同じように扱う。ゲノム編集の成果の多くは、このカテゴリーに該当する。このような規制アプローチは、国際種子連盟(ISF)がゲノム編集の規制監督に関して定めた「一貫した基準」と一致している。「最新の植物育種技術によって開発された植物品種は、以前の植物育種技術によって生産された可能性のある品種と類似しているか、または区別がつかない場合、差別的な規制を受けるべきではない」
 しかし、インド、バングラデシュ、オーストラリア、日本などの他の国では、SDN分類システムが、GMOとして規制監督の対象となる(または除外もしくは免除される)ために用いられている。前述のように、SDN規制の対象となることで、同一の遺伝的結果が異なる規制を受ける可能性がある。長期的には、このようなシステムに基づく政策は、科学的知識と技術的能力との整合性を維持し、リスクに見合った一貫性と均衡のある規制を提供するために、必然的に継続的な更新が必要となる。
 植物育種の文脈において、規制は開発プロセスで用いられる特定の手法ではなく、ゲノム編集による成果の特性に焦点を当てるべきである。科学に基づく成果重視の規制アプローチこそ、植物育種におけるイノベーションに対するリスクに応じた監督を将来にわたって保証し、気候変動や害虫・疾病の進化に対する懸念が高まる中で、改良された作物品種をより効率的に提供することを可能にする。

[出典]
  • Comment "Re-evaluating the site-directed nuclease classification as a regulatory trigger for genome-edited plant products" Mewett  O, McMurdy J [..]  Zhao KT. Nat Biotechnol. 2026-03-05. https://doi.org/10.1038/s41587-026-03028-0 [所属] BASF Australia Ltd (オーストラリア), Bayer CropScience Pty Ltd, CropLife International AISB (ベルギー), BASF Belgium Coordination Center, Bayer CropScience LP (米国), Syngenta Crop Protection LLC, Corteva Agriscience, Qi Biodesign (中国) 
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