[注] TIGER:Template-Independent Genome Editing for Restoration (修復用テンプレートを必要としない変異修復ゲノム編集法)
フレームシフト変異はメンデル遺伝性疾患の20%以上を占めており、治療上の大きな課題となっている。精華大学やChinese Institute for Brain Researchをはじめとする中国の研究チームは今回、CRISPR-Cas9が誘導するDNA二本鎖切断の修復過程として、正確ではあるが編集効率が、特に有糸分裂後細胞では、極めて低い相同組み換え過程ではなく、正確かつ効率的に修復する非相同末端結合(NHEJ)経路を介した「修復するテンプレートに依存しないゲノム編集法(Template-Independent Genome Editing for Restoration)」を、"TIGER"として、Nature Biomedical Engineering 誌刊行論文にて、紹介している。
研究チームはTIGERによる有糸分裂後細胞におけるサイズの大きなタンパク質/遺伝子のフレームシフト変異の修復を、遺伝性難聴モデルである常染色体潜性 USH1F マウスモデル"av3j"において実証した。このモデルでは、自発的に挿入されたアデニン (A)によって生じるフレームフト変異によって、膜貫通ドメインと細胞内ドメインを欠失した短縮型PCDH15タンパク質が生成される。その結果、av3j 変異体有毛細胞は機械的な力を感知できないため、ホモ接合体のマウスは重度の先天性難聴と激しい旋回行動を示す。
研究チームは、蝸牛組織片を用いた生体外gRNAスクリーニングにより、av3j マウスにおける1塩基対挿入を補償できるgRNAを1つ同定した。このgRNAを利用したCRISPR-Cas9ゲノム編集により、PCDH15タンパク質の発現と局在が回復し、標的とした有毛細胞の約4分の3が機械受容能を回復した。また、出生後早期に蝸牛管に投与することで、av3j ホモ接合マウスの聴覚および前庭症状が効果的に改善されることも確認された。さらに、分裂後蝸牛組織を用いた大規模なgRNAスクリーニングにより、このフレームシフト修復戦略は、試験したフレームシフト難聴部位の60%以上に適していることが明らかになった。
細胞や組織全体にわたって治療効果に影響を与える再現性のあるヌクレオチドレベルの因子を特定し、TIGERの適用範囲を種やゲノム全体に拡大するため、単一ヌクレオチドのフレームシフトに対する治療用gRNAを予測するようにinDelphiとFORECasTを学習させた。
TIGERは、遺伝性フレームシフト疾患の生体内修復のための、堅牢かつ幅広い応用が可能な戦略を提供する。
[出典]
- "Template-independent genome editing and restoration for correcting frameshift disorders" Qiu S, Liu L, Xiang B [..] Xiong W. Nat Biomed Eng 2026-03-23. https://doi.org/10.1038/s41551-026-01635-5 [所属] Tsinghua University (School of Life Sciences; IDG/McGovern Institute for Brain Research at Tsinghua University; Tsinghua–Peking Center for Life Sciences; State Key Laboratory of Complex, Severe, and Rare Diseases; State Key Laboratory of Membrane Biology) 中国, Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical College (Beijing Institute for Brain Research, Chinese Institute for Brain Research, Shandong University (School of Life Science), Peking University (Academy for Advanced Interdisciplinary Studies), SimpGen Therapeutics Co Ltd, Beijing Key Laboratory of Brain Science and Brain-Machine Interface
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- 2025-03-29 転写産物のミススプライシングを単一のgRNAと強化型Cas9でレスキュー. https://crisp-bio.blog.jp/archives/38188192.html
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