パーキンソン病やその他のシヌクレイン病では、αシヌクレイン(αSyn)がミスフォールディングを起こし、Ser129リン酸化凝集体(pSyn129)を形成するが、この過程を制御する因子はほとんど解明されていない。イタリアのInstitute for the Science of the Aging Brain所属のAdriano Aguzzi教授とポストドク研究員のElena De Cecco博士を共同責任著者とするFEBS Oepn Bio 誌刊行論文において、pSyn129形成の制御因子を報告している。
研究チームは、遺伝子ノックアウト(CRISPR KO)および遺伝子活性化(CRISPRa)の双方向のアレイ型のハイコンテントCRISPRスクリーニングにより、新たなpSyn129修飾因子を探索した。
四重の(quadruple)ガイドRNA(qgRNA)とCas9、CRISPRa(dCas9-VPR)を用いて、HEK293細胞において、ミトコンドリア、輸送、および運動機能に関連する2304個のヒト遺伝子をノックアウトし、2428個のヒト遺伝子を活性化した。細胞をαSyn線維に曝露した後、ハイスループット蛍光顕微鏡を用いてpSyn129シグナルを記録し、画像解析によって凝集体を同定した。
このスクリーニングの結果、ミトコンドリアタンパク質OXR1を活性化するとpSyn129が増加することが明らかになった。OXR1はATPレベルを低下させ、ミトコンドリア膜電位を変化させた。一方、小胞体(ER)関連タンパク質EMC4を欠損させるとpSyn129が減少した。EMC4はER駆動型オートファジー・フラックスとリソソームクリアランスを促進した。
OXR1の活性化は多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)患者由来の線維に対する細胞反応を優先的に調節したが、EMC4の欠損は多様なαSyn多型においてpSyn129を広範囲に減少させた。これらの知見は、ヒトiPSC由来の大脳皮質ニューロンおよびドーパミン作動性ニューロンにおいても確認され、OXR1は体細胞凝集を優先的に促進し、EMC4は体細胞凝集と神経突起凝集の両方を減少させた。
こうして、αシヌクレイン凝集におけるOXR1とEMC4のこれまで認識されていなかった役割が、明らかにされた。
[出典]
- "Large-scale bidirectional arrayed genetic screens identify OXR1 and EMC4 as modifiers of αSynuclein aggregation" Neupane S [..] Aguzzi A, De Cecco E. FEBS Open Bio. 2026-03-30. https://doi.org/10.1002/2211-5463.70233. [所属] Institute for the Science of the Aging Brain (スイス), University of Zurich (Institute of Neuropathology), Scuola Internazionale Superiore di Studi Avanzati (Laboratory of Prion Biology) (イタリア), University of Padova (Dept Biology), McGill University (Neurodegenerative Diseases Research Group) (カナダ), Tsinghua University (Aging and Regeneration Center) (中国), Institut François Jacob (MIRCen) and CNRS (フランス)
コメント