CRISPRヌクレアーゼによる遺伝子ノックアウトは、機能ゲノミクスに画期的なツールを提供したが、sgRNAが必ずしも最適ではないこと、アクセス困難な標的部位が存在すること、望ましくない修復結果を伴うこと、といった問題によって、その威力には限界がある。
この限界を超えることを目指して、ハイデルベルグ大学の Michael Boutros教授が率いる研究チームは、Cas12aヌクレアーゼに、各遺伝子を標的とする4種類のsgRNAsを組み合わせるシステムを設計し、ショウジョウバエにおいて、評価した。
この多重sgRNAsは冗長性と相乗効果を介して [Fig. 1引用右図 e 参照]、標的部位間の欠失を頻繁に引き起こし、機能喪失変異の割合を増加させた。多重遺伝子ターゲティングは生体内で良好に許容され、広範囲にわたる近接効果*を引き起こさないことが確認された。[*] CRISPR-Casヌクレアーゼ活性は、目的とする遺伝子のノックアウトに限らず、複数の近傍遺伝子に影響を与える大規模な欠失や、シス領域にある数十から数百の遺伝子を除去する染色体腕の切断などを引き起こす可能性がある。このような事象は「近接効果」を引き起こし、遺伝子ノックアウトが同じ染色体腕上に位置する無関係な遺伝子と表現型的に類似性を示すことがある。
生体におけるCRISPRヌクレアーゼ活性を可視化するスクリーニング法
pGRACE (GFP Restoration After CRISPR Editing) を開発し [Fig. 2引用右図 c 参照]、2000種類以上のsgRNAと組み合わせることで、ショウジョウバエゲノムの33%にわたるCas12a活性を評価した。
pGRACE (GFP Restoration After CRISPR Editing) を開発し [Fig. 2引用右図 c 参照]、2000種類以上のsgRNAと組み合わせることで、ショウジョウバエゲノムの33%にわたるCas12a活性を評価した。 その結果、多重化Cas12a sgRNAアレイの標的特異的活性が極めて高く(> 99%)、オフターゲット活性が極めて低く(<1%)なることが明らかになった。100以上の遺伝子を並行して標的とする既存のCas9ベースのシステムとの定量的な比較により、多重化Cas12a遺伝子ターゲティングは優れた性能を発揮し、従来の方法では見逃されていた表現型を明らかにすることが実証された。
多重化Cas 12a sgRNAアレイシステムは、多細胞系における信頼性の高い遺伝子ノックアウトのための基盤として機能する。
[出典]
- "Improved in vivo gene knockout with high specificity using multiplexed Cas12a sgRNAs" Port F [..] Boutros M. Nat Commun. 2026-01-15. https://doi.org/10.1038/s41467-026-68434-z [所属] German Cancer Research Center Heidelberg (Division of Signaling and Functional Genomics) (ドイツ), Heidelberg University (Institute for Human Genetics, Dept Cell and Molecular Biology & BioQuant), Molecular Biosciences/Cancer Biology Program, University of Applied Sciences Bingen (Dept Life Sciences and Engineering), Hunan University (The Affiliated XiangTan Central Hospital of Hunan University) (兼) (中国)
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