胆管癌(cholangiocarcinoma:CCA)は予後不良の肝臓癌の一種である。CCAの15~40%に KRAS 遺伝子変異が認められ、新たな治療標的として期待されている。しかし、KRAS阻害がCCAの腫瘍退縮につながるかどうかは、条件付き動物モデルが不足していることもあり、これまで不明であった。
195人の患者を対象とした癌ゲノム研究によると、KRAS(16%)に加えて TP53 (31%) が胆管癌において最も頻繁に変異する遺伝子であり、さらに、KRAS 変異の40%以上に KRAS <G12D>変異が見られた。さらに、マウスでは、Trp53 遺伝子の欠失を伴う肝臓特異的な Kras <G12D>の発現は、組織学的にも分子的にもCCAに類似した肝腫瘍の形成を促進する(例えば、MAPK/ERKおよびPI3K/AKT経路の活性化)。
UMass Chan Medical Schoolに籍を置く研究者達は今回、トランスポゾンシステムとCRISPR-Cas9を用いて、条件付きTRE.Kras <G12D>/Trp53 ノックアウト(TKP)CCAマウスモデルを作製した [詳細は後述*]。
- Kras <G12D>遺伝子の除去により、7日目までに90%以上の腫瘍退縮が見られた。
- 免疫組織化学染色、共免疫蛍光染色、およびscRNA-seq解析により、活性化CD8+T細胞の浸潤と増加が観察された。
- TKP細胞株のバルクRNAシーケンス解析からは、Kras <G12D>の除去がTGF-βシグナル伝達経路を刺激し、細胞老化を誘導することが示唆された。
- サイトカインアレイ解析では、IL-15やCCL17などの炎症促進因子の分泌が特徴づけられた。レンチウイルスを介したマウスIL-15およびCCL17の過剰発現は、同系移植モデルにおけるCCA腫瘍の進行を遅延させた。同様に、IL-15の発現はTKP CCAモデルにおける腫瘍進行の阻害をもたらした。
これらの知見は、CCA腫瘍の維持には発癌性 Kras が重要であり、CCAに対する潜在的な治療アプローチとしてKRAS阻害の有効性を強調している。
[*] TRE.Kras <G12D>/p53 ノックアウト CCA (TKP) マウスモデル作出
- Tet-On 誘導性 Kras <G12D> トランスジーンと逆テトラサイクリン転写活性化因子 (rtTA) をコードする Sleeping Beauty トランスポゾン プラスミド、Cas9 ヌクレアーゼと Trp53 ガイド RNA をコードするプラスミド、および Sleeping Beauty トランスポザーゼとルシフェラーゼ レポーターをコードするプラスミドを、ハイドロダイナミック尾静脈注射によりマウスの肝臓に導入する。
- 腫瘍の進行を促進するためにドキシサイクリン含有食をマウスに与えることにより、発癌性 Kras <G12D> の発現を誘導した (Kras ON)。
- CCA 腫瘍における発癌性 Kras <G12D.の除去の影響を調べるために、ドキシサイクリン含有食を通常のげっ歯類食に置き換える (Kras OFF) 。
[出典]
- "KRAS Withdrawal in Cholangiocarcinoma Leads to Immune Infiltration and Tumor Regression" Qiao Y [..] Wu JQ, Ruscetti M, Liang SQ, Xue W. Adv Sci. 2025-12-03/2026 Jan. https://doi.org/10.1002/advs.202511312 [所属] UMass Chan Medical School (RNA Therapeutics Institute; Dept Molecular, Cell and Cancer Biology; Biochemistry and Molecular Biotechnology; Dept Molecular Medicine; Li Weibo Institute for Rare Diseases Research), University of Minnesota Twin Cities (Dept Medicine)
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