タイプIII CRISPRシステムは、ウイルスに対する適応免疫応答において、ウイルスRNAを検出すると二次情報伝達分子として機能する環状オリゴアデニル酸(cOA、3~6個のAMP)メッセンジャーを生成することで下流のエフェクターを活性化するという独特の機構を備えている。
タイプIII CRISPRシステムにおけるcOA活性化エフェクターはこれまで詳細に解析されてきたが、ファージ感染時に最も多く産生されるcOA種の一つであるcA5に特異的なエフェクターについては未解明であった。
西湖大学のPIであるZhejian Ji博士と福州大学のZhonghui Lin教授が率いる研究チームは今回、Actinomyces procaprae 由来のCRISPRリボヌクレアーゼCsm6(Csm6-2)が、cA5を選択的に活性化因子として利用することを、EMBO Journal 誌刊行論文で報告している。
Csm6-2は、CARFドメインではなくHEPNドメインを用いて、cOA活性化因子の自己抑制的な切断を媒介する [Csm6-2の構成についてFigure 2引用右図参照]。- クライオ電顕による構造解析により、Csm6-2はホモ四量体として機能し、四量体形成の阻害はリボヌクレアーゼ活性を著しく低下させることが明らかになった。
- cA6とcA5はCsm6-2に同程度の親和性で結合するが、CARFドメインの閉鎖を誘導し、四量体を安定化させ、
HEPNドメインの活性部位を再構築するのはcA5のみである [Synopsis引用右図参照]。 - 対照的に、cA6の6番目のAMPはCARFドメインの動きに大きな立体障害を与え、その閉鎖とそれに続くアロステリック活性化を阻害する。
これらの知見は、タイプIII CRISPR免疫におけるcOAシグナル伝達の多様性と特異的なcOA認識機構の深さを、改めて、提示している。
[構造情報]
- EMD-65609 / PDB 9W3U:Structure of Csm6 from Actinomyces procaprae (Apo ApCsm6) (2.53 Å)
- EMD-65610 / PDB 9W3V:Structure of Csm6 from Actinomyces procaprae in complex with cyclic hexa-adenylate (ApCsm6-cA6) (2.53 Å)
- EMD-65611 / PDB 9W3W:Structure of Csm6 from Actinomyces procaprae in complex with cyclic penta-adenylate (ApCsm6-cA5) (2.67 Å)
[出典]
- "Mechanistic basis for selective Csm6-2 activation by cyclic penta-adenylate in a type III CRISPR-Cas system" Shi R, Yang M, Liu Y, Gao H, Lin Z. EMBO J. 2026-03-31. https://doi.org/10.1038/s44318-026-00767-3 [所属] Fuzhou University (College of Chemistry) (中国), Westlake Laboratory of Life Sciences and Biomedicine, Westlake University (School of Life Sciences)
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