アルツハイマー病(AD)は、世界中で数百万人が罹患する神経変性疾患であるが、早期に発見し治療を開始することで、症状の進行を遅らせ、ひいては、長期間にわたりQOLを維持することが可能なことが、明らかになっている。しかし、神経組織へのアクセスが困難なため、初期の病態生理学的変化を特定することは依然として困難である。その中で、デューク大学のBradley J. Goldstein教授が率いる研究チームは、ADでは嗅覚障害がよく見られ、また、アクセス可能な細胞であることから、嗅覚ニューロンに注目した。
健常者、脳脊髄液(CSF)バイオマーカーでADと確定診断された患者、およびCSFバイオマーカーが陽性で前臨床期ADを示唆する認知機能が正常な患者から採取した鼻腔ブレシ生検組織を評価した [論文Fig. 1 参照]。
生検組織のscRNA-seq(n=22)解析から、前臨床期AD患者においても検出可能な、神経炎症性T細胞、骨髄系細胞、および嗅覚ニューロンにおいて保存された変化が明らかになり、フローサイトメトリーによるCD8 T細胞活性化の亢進が裏付けられた。
嗅上皮(olfactory epithelium: OE)における活性化メモリーT細胞の状態は、前臨床期アルツハイマー病の特徴であり、進行期アルツハイマー病でみられる脳脊髄液中のT細胞表現型と類似しており、ミクログリア様炎症プログラムと嗅神経細胞の炎症性損傷のエビデンスを伴っていた。
研究チームは、OE生検のscRNA-seqから得られた遺伝子モジュールが、組織レベルでAD関連プログラムを要約し、アミロイドおよびタウ病理の上流または並行して起こりうる神経免疫活動の指標となるかどうか、AD関連の変化がOE生検組織の免疫細胞領域、ニューロン領域、あるいはOE全体において最も顕著に検出されるかどうか、を検討した。その結果、免疫細胞領域とニューロン領域のいずれかのコンパートメントでZスコアを利用すると、コントロール群と前臨床 AD 群または臨床 AD 群との間に有意差が生じ、さらに、両者の複合 OE モジュールによって、AUC 0.81 (95% CI: 0.68-0.94) で臨床 AD と前臨床 AD を区別可能なことが、明らかになった [論文Fig. 5 D参照]。
[出典]
- "Olfactory cleft biopsy analysis of Alzheimer’s disease pathobiology across disease stages" D’Anniballe VM [..] Goldstein BJ. Nat Commun. 2026-03-18. https://doi.org/10.1038/s41467-026-70099-7 [所属] Duke University School of Medicine (Medical Scientist Training Program; Dept Head and Neck Surgery & Communication Sciences; Dept Neurobiology; Dept Biostatistics & Bioinformatics; Dept Psychiatry and Behavioral Sciences; Alzheimer’s Disease Research Center) (米国)
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