CARMENは、2020年にブロード研究所の中核メンバーであったPaul C. Baliney博士とPardis C. Sabeti博士が共同責任著者のNature 誌刊行論文にて紹介された「Leptotrichia wadei Cas13aをベースとして、鼻腔サンプルから新型コロナウイルスを含むウイルス170種類の判定を可能にした」CRISPR Dxの一手法である [#1] 。その呼称は"Combinatorial Arrayed Reactions for Multiplexed Evaluation of Nucleic acids" に由来する。 今回、Shelby O'Connorウィスコンシン大学マディソン校教授が同校の研究チームを率いて、Pardis C. Sabetiハーバード大学教授が率いるブロード研究所の研究チームと共同で、空気サンプルからの呼吸器感染ウイルスの多重検出へと適合させたCARMENを、Environmental Microbiology 誌刊行論文にて、紹介している。
[詳細]
集団生活環境における呼吸器病原体の検出において、より高いスループット、低コスト、そしてより多くのマルチプレックス検出を可能にするために、「ゴールドスタンダード」であるqRT-PCRに代わる方法が求められている。これまでに、CARMEN-Cas13と呼吸器感染ウイルスパネル(Respiratory Viral Panel: RVP)を介して、鼻腔スワブサンプルから9種類の呼吸器病原体をハイスループットで検出した例が報告されている [#2]。
O'Connorらは今回、低バイオマス(微量)であることや環境阻害物質の存在など、空気サンプル特有の課題を克服するために、CARMEN RVPアッセイを改良・最適化した。
はじめに、2023-2024学年度に、米国ウィスコンシン州デーン郡の15校から採取した空気サンプルを用いて、qRT-PCRによりSARS-CoV-2とインフルエンザA(Flu A)をモニタリングした。 その結果、SARS-CoV-2はサンプリング期間全体を通して検出可能であったが、Flu Aについては2023年11月から2024年3月までに検出されるという季節性が確認された。
次に、空気監視用に最適化されたCARMEN RVPアッセイ(RVP_air)を使用して7つの学校からのサンプルのサブセットを分析し、結果をqRT-PCRと比較した。RVP_airアッセイは、主要なターゲット以外のいくつかの追加の病原体を検出した。SARS-CoV-2の陽性の頻度とパターンは、2023年から2024年のサンプリング期間全体にわたってqRT-PCRとRVP_airの間で類似していたが、Flu Aの陽性の頻度とパターンは類似しなかった。
続いて、Flu Aの2種類の亜型(H1N1とH3N2)をより良く検出するために、二次パネル(RVP_air_flu)を開発した。
最後に、空気サンプルの結果を同じ学区から収集された臨床鼻腔スワブと比較した。いくつかの病原体(SARS-CoV-2、HCoV-OC43、Flu A)については、空気の陽性検出が鼻腔スワブの陽性と一致した。
これらの結果は、CARMENをベースとしたRVP_airアッセイとRVP_air_fluアッセイが、学校、病院、長期介護施設などの集団生活の空間やハイリスク環境での病原体モニタリングに有効であり、地域社会への情報提供の迅速化、ひいては公衆衛生の向上につながっていくであろうことを、示している。
[出典]
- "Adaptation of the multiplexed CRISPR-Cas13 CARMEN RVP assay for longitudinal detection of respiratory pathogens from air samples" Ellis AL [..] O'Connor SL. Environ Microbiol. 2026-03-26. https://doi.org/10.1128/aem.02117-25 [所属] University of Wisconsin-Madison (Dept Pathology and Laboratory Medcicine; Wisconsin National Primate Research Center; Dept Family Medicine and Community Health) (米国), Fred Hutchinson Cancer Research Center, Broad Institute of MIT and Harvard (Dept Organismic and Evolutionary Biology), Harvard T.H. Chan School of Public Health (Dept Immunology and Infectious Disease, HHMI)
[CARMEN関連crisp_bio記事]
- 2020-08-09 CARMEN-Cas13: SHERLOCKを新型コロナを含むウイルス170種類の多重判定へと展開.
- 2022-02-16 mCARMEN: 呼吸器系ウイルスの臨床検査およびSARS-CoV-2変異系統の同定を実現する多重化CRISPRベースとするマイクロフルイディックプラットフォーム. ;SARS-CoV-2,その他のコロナウイルス,インフルエンザウイルスを含む最大21種類のウイルスを検査するmCARMEN呼吸器ウイルスパネル (Respiratory Viral Panel:RVP)
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- 2025-12-16 初期症状からは判別が難しい血液媒介感染症の高感度・高精度な早期診断を可能にするCARMEN.
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