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 細胞傷害性CD8+T細胞の発生、分化、および機能を制御するメカニズムを完全に解明することで、より優れた腫瘍免疫療法の開発への道が開ける。しかし、その活性は、自身のPD-1発現に腫瘍細胞や感染細胞表面のPD-L1/PD-L2が結合する免疫チェックポイント機構によって、抑制される。近年、細胞傷害性CD8+ T細胞におけるPD-1発現の調節因子がいくつか同定されているもののバイアスのない系統的なスクリーニングは依然として行われていない。
 首都医学科学創新中心(CIMR)と北京生命科学研究所に籍があるYu Zhang博士が率いる研究チームは今回、生体外での一次記憶CD8+ T細胞培養と、同系(syngeneic)マウス腫瘍モデル生体内での、CRISPR/Cas9ゲノムワイド・スクリーニングおよびカスタム・スクリーニングを実施することで、CD8+ T細胞のPD-1発現と機能を制御する遺伝子および経路を系統的に同定した。
 その中で、糖複合体生合成における重要な酵素であるβ1,4-ガラクトシルトランスフェラーゼ1(B4GALT1)の不活性化が、生体外と生体内の双方で、マウスCD8+ T細胞のPD-1発現、TCR活性化、および機能を増強することが明らかになった。ヒトCD8+ T細胞においても、B4GALT1の同様の役割が観察された。興味深いことに、B4GALT1の抑制はTCR-T細胞の機能を増強するが、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞には影響を与えなかった。
 研究チームは、CD8+ T細胞表面上のB4GALT1の基質の系統的同定も、アフィニティー精製と質量分析法によって試みた。これらの基質には、TCRとその共受容体複合体の双方のタンパク質成分が含まれていた。TCRとCD8のガラクトシル化が、TCR活性化に不可欠なTCRとCD8の相互作用を減少させることが明らかになり、また、TCR-CD8融合タンパク質を用いてTCRとCD8を人工的に結合させることで、CD8+ T細胞におけるB4GALT1の制御を回避できることが示された。
 さらに、The Cancer Genome Atlasのデータから、腫瘍微小環境における腫瘍浸潤CD8+ T細胞におけるB4GALT1の発現レベルが、ヒト患者の予後と負の相関関係にあることが見出された。
 これらの結果は、タンパク質のN-グリコシル化がCD8+ T細胞の機能制御において重要な役割を果たしていることを明らかにし、B4GALT1が腫瘍免疫療法の潜在的な標的であることを示している。

[出典] 
  • "Ex vivo and in vivo CRISPR/Cas9 screenings identify the roles of protein N-glycosylation in regulating T-cell activation and functions" Hong Y, Si X, Liu W, Mai X, Zhang Y. eLife 2026-03-20. https://doi.org/10.7554/eLife.108724.3 [所属] Chinese Institutes for Medical Research (Chinese Institute for Cancer Research) (中国), National Institute of Biological Sciences, Chinese Academy of Medical Sciences & Peking Union Medical College, Capital Medical University (School of Basic Medical Sciences)
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