crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

[注] 
  • 精密育種 (Precision Bred Organism:PBO) は、CRISPR技術をはじめとする遺伝子編集技術による育種の広がりを受けて、2023年に英国が制定した"Genetic Technology (Precision Breeding) Act 2023"で定義された「それまでの遺伝子組み換え(GMO)規制」と異なる作物の定義
  • Rothamsted Research(ロザムステッド研究所)は、以前はロザムステッド実験ステーション、その後は耕作に適した物の (arable crops) 研究所として知られ、1843 年に設立された世界最古の農業研究機関の 1 つである [Wikipedia]
 今回の承認を得てロザムステッド研究所は、当所の遺伝子編集大麦のより広範な評価(研究・分析)を経て、最終的に商業展開へと進むことが可能になった。
 この大麦は、CRISPR遺伝子編集技術を用いて植物組織の脂質含有量を増加させることで開発され、牛や羊などの反芻動物向けの高エネルギー飼料作物として利用される。飼料中の脂質レベルを高めることで、飼料効率が向上し、消化過程で発生するメタン排出量を削減できる可能性がある。大麦に導入された遺伝子改変は、自然発生的、あるいは従来の育種によっても起こり得る小さな変更であり(したがって、GMOに該当しない)、環境放出諮問委員会による科学的審査を経て承認された。

 ロザムステッド研究所で開発された大麦は、植物油を分解する遺伝子に小さな改変を加えることで改良された。この分解プロセスを抑制することで、植物は栄養組織に脂質をより多く蓄積する [モデル植物のシロイヌナズナでの実証例がFEBS Letter 誌刊行論文で紹介されている (*)]その結果、代謝エネルギーが増加した飼料作物が得られ、家畜が同じ飼料摂取量からより多くのエネルギーを得られる可能性がある。

 この大麦は、PROBITY(Platform to Rate Organisms Bred for Improved Trait and Yield:改良された形質と収量のために育種された生物を評価するプラットフォーム)イニシアチブを通じて評価されている。これは、研究者、農家、サプライチェーンパートナーが協力して、実際の農業環境で精密育種作物を試験するために設計されたものである。このプロジェクトは、The British On-Farm Innovation Network(BOFIN)が主導し、イノベートUK(Innovate UK)が実施する環境・食糧・農村地域省(Defra: Department for Environment, Food and Rural Affairs)のFarming Innovation programmeから資金提供を受けている。高脂質大麦に加え、このプロジェクトでは、ロザムステッド研究所とJohn Innes Centreがそれぞれ主導する、穀物品質と収量の向上を目指した精密育種小麦品種の評価も行っている。

[ロザムステッド研究所関連crips_bio記事]
[出典]
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