RNAを標的とするCRISPR-Cas13aは、オフターゲット効果が低く、強力なRNAノックダウンを実現する効率的なツールであり、癌遺伝子治療において強力かつ安全なツールとなる可能性を秘めている。しかしながら、単一遺伝子を標的とする既存のがん遺伝子治療は、腫瘍形成における複数の変異シグナル伝達経路の変化によって治療効果が損なわれるという問題がある。
四川大学華西医院の研究チームは今回、生体内での効率的なマイクロRNA阻害により、複数の経路を介した腫瘍抑制を実現するため、腫瘍細胞内で階層的に活性化するナノCRISPR-Cas13a (hierarCHically tumor-ActIvated NanoCRISPR-Cas13a)(CHAINと命名)を作製した。
グラフト率33%のフッ素化ポリエーテルイミド(PEI;分子量1.8kD)(PF33)を用いて、マイクロRNA-21(miR-21)を標的とするサイズが 約13kb のCRISPR-Cas13aメガプラスミド(pCas13a-crRNA)を自己集合によりナノスケールの「コア」(PF33/pCas13a-crRNA)に凝縮し、さらに修飾ヒアルロン酸(HA)誘導体(ガラクトピラノシド-PEG2000-HA、GPH)で被覆してCHAINを形成した [Figure 1引用右下図 A 参照]。
二重腫瘍標的化および腫瘍活性化能を有するCHAINは、長期循環を示すだけでなく、腫瘍細胞への取り込みとエンドソーム/リソソームからの脱出を促進し、最小限の毒性で腫瘍細胞へのCRISPR-Cas13aメガプラスミドの効率的なトランスフェクションを実現した。 CHAINによるmiR-21の効率的なノックダウンは、プログラム細胞死タンパク質4(PDCD4)およびRECK(reversion-inducing cysteine- rich protein with Kazal motifs)の発現を回復させ、さらに下流のマトリックスメタロプロテアーゼ-2(MMP-2)の活性を低下させ、癌細胞の増殖、遊走、浸潤を抑制した [引用図 B 参照]。同時に、miR-21-PDCD4-AP-1正のフィードバックループは、抗腫瘍活性をさらに増強する働きをした。
肝細胞癌マウスモデルにおけるCHAINによる治療は、miR-21の発現を著しく抑制し、複数の経路を回復させることで、腫瘍増殖を大幅に抑制した。CHAINプラットフォームは、CRISPR-Cas13aによる効率的な癌遺伝子マイクロRNAの阻害によって、癌治療において有望な可能性を示した。
[出典]
- "Hierarchically tumor-activated nanoCRISPR-Cas13a facilitates efficient microRNA disruption for multi-pathway-mediated tumor suppression" Liu X, Yang S, Wang L [..] Wu Q, Gong C. Theanostics. 2023-05-08. https://www.thno.org/v13p2774.htm
[四川大学華西医院を主とする研究関連crisp_bio記事]
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