2026-04-08 7:57 am 多重塩基編集関連crisp_bio記事へのリンクを追記
吉林大学のHongming Yuan教授、Daxin Pang教授、およびLin Yang聘助理教授が率いる研究チームは、先行研究で6つの一本鎖DNAデアミナーゼ(ssDNA deminase: Sdd)*を発見し、それまでのCBEで利用されていたデアミナーゼを差し替えることで、コンパクトで高活性なCBEバリアントを誘導することに成功していた。
[*] SviSdd, AirlSdd, flSdd, LaeSdd, AbaSdd, およびAtoSdd:crisp_bio 2026-04-08 コンパクトなシチジン塩基エディター (CBE) に向けた新規一本鎖シチジンデアミナーゼの探索と利用参照。
研究チームは今回、単一のnCas9 (D10A) の上で、低分子でその活性が制御可能なCBE(C-to-T編集)とABE(A -to-G編集)を構築することで、多重塩基編集システムの一種となる「アデニンおよびシトシン塩基編集制御型変換システム(adenine and cytosine base editing-regulated transformation system(ACBE-RTS)」を 実現した。
ACBE-RTSは、小型の(約140アミノ酸)Sdd阻害剤(Sddi)を探索・発見し
[Figure 1の一部引用右図 A 参照]、不活性化したSdd (dSdd) と組み合わせることを発想したことで実現した。Sddiは、対応するSddに高い親和性と特異性で結合し、SddのDNA結合面を遮断することでCからTへの変換活性を完全に阻害する 。
研究チームはnCas9 (D10A) に2種類の不活性dSdd(dSviSdd (E153A) と dAir1Sdd (E193A))を融合させ、それぞれに対応するSddi (SviSddiとAir1Sddi)を介して、、研究チームが先行研究で開発したSflSddをデアミナーゼとして利用するドキシサイクリン誘導性CBEとクメート誘導性ABE8eをnCas9 (D10A)へとリクルートするシステムを構築した。
すなわち、Figure 5 - Eを引用した右下図
にあるように、ACBE-RTSは、ドキシサイクリン誘導性SviSddi–SflSdd(CBE)およびクメート誘導性Air1Sddi–ABE8e(ABE)融合タンパク質からなるエフェクターモジュールを特徴とし、 ドキシサイクリンとクメートの組み合わせにより、4 つのモード (OFF、CBE(ドキシサイクリン単独活性化)、ABE(クメート単独活性化)、ACBE(ドキシサイクリンとクメート併用による活性化)) を切り替えることができる。
研究チームはまず、ACBE-RTSを利用することで、4 つの内因性ヒト部位で最大効率43.4% の C-to-T または 42.9% の A-to-G への編集が実現することを、実証した。
次に、ACBE-RTSによって、3ラウンドのスクリーニングで、単一細胞集団に複数の編集モード(CBE、ABE、ACBE)を導入可能なことを実証した。ACBE-RTSを安定的に発現させたMARC-145細胞において、抗ウイルス受容体CD163を標的とする4000以上のsgRNAライブラリを用いた概念実証スクリーニングにおいて、3ラウンドのスクリーニングにより、高病原性豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)の複製を100倍以上減少させる4つの重要なアミノ酸を同定することに成功した。
ACBE-RTSによってA-to-G、C-to-T、または両者の組み合わせ編集データの並行取得が可能になり、ワークフローが大幅に効率化される。
ACBE-RTSは、その厳密な直交性と外部制御性により、大規模な機能ゲノミクスに適しており、精密遺伝子治療や複雑形質解析のための汎用性の高いプラットフォームとなる。また、ACBEーRTSをもたらしたSddi–Sdd インターフェースは、原理的には、チミンおよびグアニン塩基エディター (TBE および GBE) などの他の塩基エディターにも容易に拡張可能である。
[出典]
- "Regulated transformation system (RTS): sddi-mediated programmable shut-off and mode switching of base editors" Deng J [..] Pang D, Yang L, Yuan H. Nucleic Acids Res 2026-03-19. https://doi.org/10.1093/nar/gkag162 [所属] Jilin University (College of Animal Sciences; Chongqing Research Institute) (中国), Chongqing Jitang Biotechnology Research Institute, Heilongjiang Bayi Agricultural University (College of Animal Science and Veterinary Medicine)
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