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[注] 特定の生物集団の中で、頻度が1%以上のSNVを(Single Nucleotide Polymorphism:SNP)と呼ぶ
 CRISPR-Cas12aシステムは、ガイドRNA(crRNA)の誘導により標的のDNA二本鎖に結合すると周囲の一本鎖DNAを無差別にトランス切断する活性を発揮します。この特徴をベースに、簡便かつ高感度な核酸診断のための有望なCas12aバイオセンサーが数多く開発され、標的dsDNAはアクチベーターと称されてきました。しかし、Cas12aバイオセンサーは、crRNAと標的dsDNAとの間にミスマッチが許容されることから、SNVを正確に検出する能力が制限されます。UConn HealthのChangchun Liu教授が率いる研究チームが今回、Cas12aバイオセンサーの制限を克服した「高精度な対立遺伝子識別を実現するプログラム可能なCRISPR-Cas12aアプローチである Structure-Disruption-Sensitive CRISPR(SDS-CRISPR)」を、Advanced Science 誌刊行論文にて紹介しています。
 研究チームは、AlphaFold3モデリングとバイオインフォマティクス解析に基づき、論文FIGURE  1から引用した左下図にあるように、DNAアクチベーターの分割 (図中のactSplit )とcRNAの分割(図中crSprit )と、反応溶液中のMg/Kイオン濃度の制御を介して [論文FIGURE 6 引用右下図 参照]
SDS‐CRISPR FIGURE 1SDS‐CRISPR FIGURE6
Cas12aのコンフォメーションを調節するアプローチを設計・実装し、SNV識別が可能なことを実現した。
 研究チームは、中枢神経系腫瘍分類の重要な分子マーカーとして知られており、その変異が患者の予後を層別化するだけでなく、術中の切除戦略を決定し、それによって生存転帰を決定的に左右するイソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)遺伝子の変異を対象に、SDS-CRISPRの実証実験を行いました。具体的にはIDH変異の中で、最も一般的であり、Iびまん性神経膠腫におけるすべてのIDH変異の約90%を占め、確立された診断および治療上の関連性を持つ、最も臨床的に対応可能な変異であるIDH1<R132H>の検出を検証し、アトモル感度と0.01%の変異頻度でIDH1<WT>およびIDH1<R132H>対立遺伝子の検出を実証しました。その上で、手術中に利用できるように、SDS-CRISPRをラテラルフローストリップおよび人工知能支援型スマートフォンリーダーと組み合わせることで、20分以内での現場検出を可能にしました。43個の神経膠腫組織サンプルを用いた臨床検証では、免疫組織化学との高い一致が示され、血漿cfDNA検査では、次世代シーケンシングと一致する変異率が実証されました。
 SDS-CRISPRは、神経膠腫以外にも、密接に関連している一連のマイクロRNAアイソフォームの識別や、HIV-1逆転写酵素M184V薬剤耐性変異を選択的同定を実現し、核酸標的の汎用的バイオセンサーとして有効なことが実証されました。
 総合的に見て、SDS-CRISPRは、普遍的で、構造的にプログラム可能で、メカニズムに基づいた、臨床的に応用可能なフレームワークを提供し、精密診断において幅広い可能性を秘めています。
[注] 出典の論文では、actSplit crSprit および2種類の金属イオン濃度の調節によるSDS -CRISPRのSNV検出の分子機序について詳細に考察が加えられていますが、SDS-CRISPRのSNV識別は、不活性と活性の明確な切り替えではなく、標的に依存するREC2ドメインを中心とする微妙な構造変化に依存するとされています。

[出典]
  • "SDS‐CRISPR for Single‐Nucleotide Variant Detection" Guan X [..] Liu C. Adv Sci. 2026-04-07. https://doi.org/10.1002/advs.75149 [所属] University of Connecticut Health Center (Dept Biomedical Engineering; Dept Neurosurgery), University of Connecticut (Dept Biomedical Engineering), University of Connecticut Health Center (Pathology and Laboratory Medicine)
[Cas12aの高性能化関連crisp_bio記事と論文]
  • CRISPRメモ_2018/08/23 [第2項] crRNA 5'端の伸長によって、Cpf1の送達効率も編集効率も向上する. https://crisp-bio.blog.jp/archives/11644150.html
  • CRISPRメモ_2020/02/10 - 1 [第2項] DNA-RNAキメラガイドによりCRISPR-Cas12aの標的特異性を亢進. https://crisp-bio.blog.jp/archives/21884420.html
  • 2021-09-08/2022-05-05 標的特異性が極めて高いキメラ型DNA-RNAガイドによるenCRISPR-Cas12aによるゲノム編集の性能. https://crisp-bio.blog.jp/archives/27354404.html
  • 2021-12-30/12-31 Cas12aの効率的標的切断とコラテラル活性を,足場とスペーサーとにスプリットしたcrRNAで実現. https://crisp-bio.blog.jp/archives/28276839.html
  • 2023-09-08 Cas12aのcrRNAの標的認識機構を深く理解することから、DNAとRNAの多重検出も可能にするSAHARAを開発. https://crisp-bio.blog.jp/archives/33218992.html
  • 2025-06-05 空間的にブロックされたスプリット型CRISPR-Cas12aシステムによる超高感度で多様な低分子の活性化と検出. https://crisp-bio.blog.jp/archives/38691656.html
  • ‘Splice-at-Will’ Cas12a crRNA Engineering Enabled Direct Quantification of Ultrashort RNAs" Fei X, Lei C, Ren W, Liu C. Nucleic Acids Res. 2025-01-11. https://doi.org/10.1093/nar/gkaf002 [極めて短いRNAの検出を目指したスプリット型アプローチが紹介されています:完全なCas12a crRNAをスペーサー領域のほぼ任意の位置から切断して、補助DNAアクチベーターが結合してもCas12aを活性化できない切断型crRNA(tcrRNA)を得ることができます。tcrRNAを超短RNAの一部とスプライシングすると、形成された複合体が協働してCas12aを効率的に活性化し、 ‘splice-at-will’ crRNAエンジニアリングが可能になります。重要なことに、 ‘splice-at-will’ crRNAは、従来の完全なcrRNAとほぼ同じトランス切断活性化効率を示します。したがって、保存されたtcrRNA相補配列と任意の短い目的RNA認識ドメインを持つDNA補助活性化因子を合理的に設計すれば、従来のDNA活性化Cas12aを直接利用して超短RNAを検出する汎用センサーが実現します。この ‘splice-at-will’ crRNAエンジニアリング戦略により、従来のCas12aおよびCas13aシステムでは実現できなかった、6~8ヌクレオチドという極めて短いRNA配列を忠実に検出することが可能になりました。さらに、柔軟なスプライシング部位設計により、マイクロRNAやその他の短いRNA配列における単一塩基の違いも正確に識別できます。
  • 2025-08-16 CRISPR-Cas12aにスプリット型crRNAを組み合わせることで, DNAに加えてRNAも高感度に検出するマルチ検出システムを実現. https://crisp-bio.blog.jp/archives/39092779.html
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