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 日本では、毎年春になると黄砂飛来が取り上げられるようになってから久しい。「黄砂は、ユーラシア大陸内陸部の乾燥・半乾燥地域で強風によって数千メート ル の 高 度 に ま で 巻 き 上 げ ら れ た 土 壌 ・ 鉱 物 粒 子 が 偏 西 風 に 乗 っ て 飛 来 し 、大気中に浮遊あるいは降下する現象」です [黄砂とその健康影響について 環境省環境保健部環境安全課 2019年3月発行]
 中国では、黄砂が由来する砂漠の拡大を抑制さらには砂漠を縮小することを目指して, 1978年に「緑の長城(Great Green Wall:GGW)」プロジェクトを開始しました。アフリカでも、2007年にアフリカ西岸のセネガルから東の沿岸部までの約7000 kmを樹林帯で繋ぐGGWプロジェクトが始まりました Great Green Wall[右図は国連の関連Webサイトのスクリーンキャプチャ]
 今回、上海交通大学設計学院と内モンゴル研究所のRuishan Chen教授が責任著者となっているNature誌刊行論説(Comment)[#1] にて、緑の長城プロジェクト(正式名称「三北防風林計画」)における、砂漠、低木地帯、その他の水不足地域を含む乾燥地帯の緑化の取り組みについて述べられている。Nature誌はこのComment記事をとりあげて「大規模な砂漠化対策計画は、樹木が枯れ、資金が枯渇すると、しばしば失敗に終わる。しかし、あるプロジェクトは、その常識を覆した」として、「アフリカのGGWは中国のGGWから学ぶところがある」とするEditorial記事 [#2] を発行しました。
 実は、Forbes誌も2025年に、"... 中国の「緑の長城」は、むしろ学んで成長していくプロジェクトと言えるだろう。そして、気候と生物多様性に関する危機的状況を脱しようとして、世界中で先を争うように植林が進んでいる現状を考えると、このプロジェクトから得られた教訓は、実際に植えられた森林以上の価値を発揮する可能性もある。"という記事を配信していました [#3]
 中国のGGWは、中国北部全域(国土の40%)に広大な森林と植林地をパッチワーク状に造成し、砂の移動を安定させることを目的とし、2050年の完成が予定されています。その狙いは、ゴビ砂漠とタクラマカン砂漠の侵食から農地、村落、道路、鉄道を守ることです。
 初期段階では、成長の早い樹種が大規模に植林されましたが、その土地に適さない樹種であったことから、一進一退が繰り返されました。しかしながら、GGWプロジェクトが及んだ地域全体でみると、森林被覆率が1978年の約5%から2023年には14%弱へとほぼ3倍に増加し、砂嵐の頻度と強度は低下し、風下側の都市、特に北京の大気が改善されました。
 中国以外では、アフリカ、インド、湾岸諸国における緑化プロジェクトは成果を上げるのに苦戦しています。例えば、アフリカのGGWは、2007年から2020年の間にわずか400万ヘクタールの荒廃地を回復させたに過ぎず、2030年までに1億ヘクタールを再生するという目標には遠く及ばない状況です。中国の場合も、中国の国土全体で見ると約27%が依然として砂漠に分類されており、2014年以降わずか1.5%しか減少していません。
 しかし、世界各国は、砂漠化の拡大を抑制するために、中国の戦略の一部を取り入れることで恩恵を受けることができると考えられます。
 中国北部地域での成功は、中国の長期戦略と予測可能で継続的な資金提供、そして緑化計画担当者が過去の経験から学ぶことを重視してきたことで達成されました。例えば、2020年以降、中国の政策立案者は植林面積を唯一の成功指標とするのをやめ、土地再生が人々と環境にもたらす恩恵を評価する代替指標を模索してきています。こうした新たな指標には、植生が砂嵐の頻度と強度に与える影響の分析や、植林による経済効果(新規雇用の創出など)の分析が含まれています。
 また、約10年前から、中国の砂漠地帯には大規模な太陽光発電所や風力発電所が建設され、緑化計画担当者は現在、これらの再生可能エネルギー施設の周囲に植栽を行っています。太陽光パネルには、日陰を作り、水分を保持し、地温を下げ、蒸発を抑制する効果もあったのです。
 Comment記事では、「デジタルインセンティブ」がGGWに向けた人々の意識を高め、資金調達を促進する効果があったことも紹介されています。バイル決済アプリ「アリペイ」のゲーム化された取り組み「アントフォレスト」は、中国最大の民間植樹事業です。このゲームには5億人以上のユーザーがおり、ウォーキングや公共交通機関、シェアサイクルなどの低炭素活動を行うことで「グリーンエネルギー」ポイントを獲得できます。ユーザーが十分なポイントを集めると、アリペイが実際に木を植えたり、保護区を保護したりします。2016年の開始以来、アントフォレストは6億1900万本以上の干ばつに強い樹木や低木の植樹を支援し、生物多様性回廊や保護区の整備にも貢献してきました。
 Comment記事はまた、GGWプロジェクトの継続・促進にはモニタリングが重要なことも強調しています。1994年以降、砂漠化に関する全国調査が6回実施されました。最新の調査では、高解像度衛星画像とドローンによる調査、現地検証が用いられ、結果はGGW・ビッグデータ・ファシリテーターというデジタルプラットフォームにて、アーカイブ化、地図化、公表されています。このプラットフォーム上で「改善は見られたか?」という問いに対する答えは定量化でき、地域間の比較が(中国では)地方政府の責任追及に役立ちました。
 現在、世界の陸地の約40%は乾燥地帯に分類されていますが、球温暖化の影響で、乾燥地帯は拡大し、2100年までに、地球の陸地の半分が乾燥地帯となり、50億人がそこに居住すると予測されています。加えて、農業などの人間活動が、保護植生の除去、土壌の圧縮と劣化、そして土地の保水能力の低下によって、問題をさらに悪化させています。地域に最適化されたGGWが広がることが望まれます。

[#]
  1. COMMENT "Can China’s Great Green Wall shape efforts to keep the world’s deserts at bay?" Zheng L [..] Chen R. Nature 2026-04-15. https://doi.org/10.1038/d41586-026-01102-w [所属] Shanghai Jiao Tong University (中国), Nanjing University, Nanjing Agricultural University, Xinjiang Institute of Ecology and Geography CAS, Institute of Applied Ecology CAS, Institute of Geographic Sciences and Natural Resources Research CAS, Wageningen University (オランダ), University of Oxford (英国), Columbia Climate School (米国)
  2. EDITORIAL "What China’s Great Green Wall can teach the world" Nature 2026-04-15. https://doi.org/10.1038/d41586-026-01195-3
  3. 「砂漠化を止められるか? 中国の「緑の長城」プロジェクト、成功宣言の陰で残る課題」Travers S. Forbes Japan. 2025-09-12. https://forbesjapan.com/articles/detail/81941
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