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 フィラデルフィア小児病院のStella T. Chou准教授が責任著者となっているTransfusion 誌刊行論文にて、高頻度に見られるMAM抗原*を欠失している赤血球産生を実現し、高頻度抗原に対する抗体同定の精度向上、ひいては、精密輸血医療の推進が可能なことが、紹介されています。
[*] EMP3 遺伝子にコードされており、その欠失は極めて稀なことが知られています。

[詳細]

 赤血球(RBC)抗原に対する同種抗体は、不適合なRBCに曝露されると形成され、繰り返し曝露されると、これらの抗原を発現する細胞の抗体介在性破壊につながります。
 胎児・新生児の溶血性疾患(Hemolytic Disease of Fetus and Newborn:HDFN)では、不適合な胎児RBC抗原に対する母体の同種抗体が形成され、胎児および新生児細胞の免疫介在性破壊につながります。最も一般的な原因はRhDに対する母体の感作であり、3RhD陰性RBCで容易に診断および管理できます。
 対照的に、ヒト集団で高頻度に見られるRBC抗原に対する免疫によって引き起こされる同種免疫およびHDFNは、診断および治療において大きな課題となります。これらの抗原はほぼすべてのドナーおよび試薬赤血球に存在するため、抗体同定パネルはしばしば汎反応性を示し、抗体の特異性を決定して安全な輸血に適したドナーユニットを選択することができなくなることが、原因です。診断には、希少な試薬細胞と、参照検査室に限定された分子生物学的手法を組み合わせる必要があり、抗体同定に適した赤血球の不足は、治療の遅延、患者の罹患率および死亡率の上昇につながります。
 研究チームは、先行研究でEMP3の欠損が赤血球増殖を促進する可能性が示唆されていることから、EMP3のノックアウト(KO)が、希少な試薬細胞の産生と、拡張可能な生産を支える赤血球増殖の改善の両方をもたらす可能性があるという仮説のもとで、研究を進めました。
  • CRISPR-Cas9 GEを用いて、O型Rhヌル親細胞株からEMP3 KO iPS細胞株を樹立しました。
  • EMP3 KO細胞は効率的に赤血球系細胞へと分化し、95%以上のCD235/CD71共発現と正染性赤芽球形態を示しました。
  • 未編集細胞と比較して増殖上の利点は認められず、この点は、先行研究の非同系細胞モデルとは対照的でした。
  • 凝集アッセイによりMAM抗原の完全な消失が確認され、MAM抗体の同定における診断的有用性が実証されました。
  • EMP3KO赤芽球のトランスクリプトーム解析では、主要な赤血球系遺伝子、ならびに増殖およびヘム代謝の調節因子の発現は、親細胞株と同程度であることが明らかになりました。
 こうして、iPSC技術と遺伝子編集を組み合わせることで、免疫血液学用途に利用可能な希少な抗原が陰性の赤血球を作製できることが実証されました。 このプラットフォームは、MAM抗原欠損にとどまらす希少な赤血球表現型をさらに生み出す戦略を提供し、精密輸血医療を進歩させ、高頻度抗原に対する抗体同定を改善することが期待されます。

[出典]
  • "Rare antigen-negative red blood cells from pluripotent stem cells for precision transfusion medicine" Gunawardena N [..] Chou ST. Transfusion. 2026-04-24. https://doi.org/10.1111/trf.70243 [所属] Children's Hospital of Philadelphia, UPenn (Perelman School of Medicine), New York Blood Center Enterprises
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