[注] HSPC(Hematopoietic Stem and Progenitor Cell / 造血幹・前駆細胞)
- ロックフェラー大学分子免疫学研究室(Michel C. Nussenzweig教授)を主とする国際的な研究チームからのScience 誌刊行論文;論文の筆頭著者かつ責任著者は同研究室のHarald Hartweger研究助教(research assistant professor)
ワクチンは、感染症を制御、排除、または予防するために、特定の抗体の長期的な発現を誘導します。しかし、HIV、インフルエンザ、マラリアなど、ワクチンによる効果的そしてまたは長期的な抗体反応が成立しない感染症が存在します。一方で、ワクチン接種や感染により感染症を防御および治療できる広域中和抗体(broadly neutralizing antibodies:bNAb)を産生する人々が存在することが知られています。それでは、治療用タンパク質の長期的な生体内生産や、主要な病原体に対して有効なレベルの広域中和抗体(bNAb)を誘導することが、できないものでしょうか?
研究チームは今回、希少な造血幹細胞(HSC)に由来するBリンパ球から形質細胞が分化する過程に注目しました。ワクチン接種後、ポリクローナルなB細胞集団の中から、抗原特異的なB細胞のごく一部が選択され、クローン増殖を経て、高濃度の持続性血清抗体を産生する形質細胞へと分化します。この自己増幅システムを、特性が明確に定義された防御抗体または治療抗体、あるいは付加的なカーゴタンパク質の産生に利用できるかどうかを検討するため、Bリンパ球を生み出す造血幹・前駆細胞(HSPC)を改変するアプローチを、マウスにおいて、探求しました。
- HSPCの免疫グロブリン遺伝子座をCRISPR-Cas9で編集することで、特異的な抗体および関心のあるタンパク質(以下、カーゴタンパク質)をコードさせました。
- 遺伝子編集されたHSPCをマウスに移植したところ、免疫前に、目的の抗体とカーゴタンパク質を発現するBリンパ球へと成熟しました。
- マウスを抗原に曝露すると、挿入された抗体の血清中濃度が長期間にわたり高値を示し、ブースター免疫によってさらに上昇させることができました。
この治療レベルの抗体産生は、ごく少数の(約7000個)の編集済みHSPCで達成されました。さらに、編集済みHSPCを組み合わせることで
[bioRxiv 版のFig. 3の一部引用右図参照]、同一の免疫原を標的とする異なる抗体を同時に産生させることにも成功しました。こうして、HIV-1を中和し、マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の肝細胞通過を阻害し、異種インフルエンザウイルスによる致死感染からマウスを保護するのに十分な得られた抗体価が得られました。
さらに、編集済みヒトHSPCは、免疫不全マウスモデルにおいて、特異的抗体を発現するヒトBリンパ球を産生することが、確認されました。
[bioRxiv 版のFig. 3の一部引用右図参照]、同一の免疫原を標的とする異なる抗体を同時に産生させることにも成功しました。こうして、HIV-1を中和し、マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の肝細胞通過を阻害し、異種インフルエンザウイルスによる致死感染からマウスを保護するのに十分な得られた抗体価が得られました。さらに、編集済みヒトHSPCは、免疫不全マウスモデルにおいて、特異的抗体を発現するヒトBリンパ球を産生することが、確認されました。
少数の編集済みHSPCは、抗原によってクローン増殖するBリンパ球へと分化し、長期間持続する高力価の防御抗体または治療抗体、および/または関心のあるタンパク質を産生させることが、実証されました。送達方法と安全性のさらなる進歩により、このシステムは将来的に治療の可能性を秘めています。
[出典]
- 論文 "B lymphocyte protein factories produced by hematopoietic stem cell gene editing" Hartweger H, Ruprecht C, Yao KH et al. (bioRxiv. 2026-01-18 (preprint)) Science 2026-04-16. https://doi.org/10.1126/science.adz8994 [所属] Rockefeller University (米国), Yale School of Medicine, Beth Israel Deaconess Medical Center/HMS, Weill Cornell Medicine, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, Johns Hopkins School of Public Health and Johns Hopkins Malaria Research Institute, University of Chicago, Fred Hutchinson Cancer Center, University of Washington, Max Planck Institute for Infection Biology (ドイツ), B Cell Immunology/German Cancer Research Center, Medical University of Vienna (オーストリア), The Hospital for Sick Children Research Institute (カナダ), University of Toronto;グラフィカルアブストラクト (A prototype cell therapy approach)
- PERSPECTIVE "Programmable cellular protein factories - Engineered immune cell precursors produce antibodies on demand in mice" James R, Zhang TT. Science. 2026-04-16. https://doi.org/10.1126/science.aeg7084 [所属] Seattle Children’s Research Institute (Center for Immunity and Immunotherapies; Department of Pediatrics) (米国)
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