ヨーク大学のKanchon Dasmahapatra教授が責任著者になっている多国籍の研究者たちによるPLoS Biology 刊行論文から収斂進化や並行進化と称される「現時点では異なる分類群に位置付けられている生物が、独立に進化してきたにも関わらず似通った表現型を示している」例は、自然界に広く見られます。しかし、その遺伝的メカニズムを実際に遠縁の生物間で探究した研究は多くありません。チョウ目とも呼ばれる鱗翅目の翅の色パターン擬態は収斂進化のよく知られた例ですが、その研究も近縁種に限定されています。
研究チームは今回、約100万年前から1億2000万年前に分岐した、複数の擬態する新熱帯区(neotrpical realm)[*1]の蝶における収斂進化のメカニズムを、探究し、標題の結論に至りました。
[*1] 特徴的な生物相に基づいて定義された世界の6つの主要な生物地理区の1つで南アメリカ、中央アメリカ、メキシコ南部、西インド諸島を含む [Britannica AI]
[詳細]
研究対象には7種のIthomiini 族(マダラチョウ亜科の部族;4種にわたる285個体)とヘリコニウス属(Heliconius; ドクチョウ属とも呼ばれる)のチョウ、および昼行性のChetone 属のガ(Chetone histrio)が選択されました
[Fig 1引用右図参照]。
[Fig 1引用右図参照]。- ゲノムワイド関連解析(GWAS)から、約3000万年前に分岐したIthomiini 族の系統全体で、収斂的な色彩パターンの変化に最も強く関連する遺伝子変異は、ivory 遺伝子とoptix 遺伝子の近くの類似したノンコーディング領域に位置していました。Ithomiini族と8000万年前に分岐したヘリコニウス属のHel. pardalinus 82個体においても、同様の結果が得られました。
- ヘリコニウス属並びにIthomiini族とより遠縁のガ C. histro では、色彩パターンの変異は、ivory 遺伝子も含む約1Mbの逆位と関連しており、共擬態のチョウであるHeliconius numata [*2]の複数の遺伝子が関与して複雑な適応現象を発現する超遺伝子構造とよく似ていました 。C. histrio と Hel. numata のゲノム構造の類似性は、遺伝子の使用だけでなく、遺伝的構造においても、約 1億 2000 万年前に分岐した系統間で顕著な並行進化の存在を示唆しています。[*2] Nature ハイライト「Cover Story:持ち札を切り混ぜる:擬態の達人であるチョウが「超」遺伝子を使って複数の翅のパターンを切り替える仕組み」Nature 2011-09-08.
ゲノムワイド関連解析から関連遺伝子として特定されたivory 遺伝子とoptix 遺伝子が、Ithomiin族のチョウにおける色彩パターン形成に因果的に関与していることを確認するため、Mec. messenoides においてCRISPR-Cas9遺伝子ノックアウト実験が行われました
[Fig. 4引用右図参照]。
[Fig. 4引用右図参照]。 また、遺伝子浸透による対立遺伝子共有が色彩パターンの収斂を促進したか、GWASの対象とした種にくわえてチョウ24種222個体の比較ゲノム解析も行われ、その種間の収斂が交雑によって共有された対立遺伝子に起因するというエビデンスは限定的という結論に至りました。
[出典]
- "Genetic parallelism underpins convergent mimicry coloration in Lepidoptera across 120 million years of evolution" Chehida YB, van der Heijden ESM, Page E [..] Dasmahapatra KK, Meier JI. PLoS Biol. 2026-04-30. https://doi.org/10.1371/journal.pbio.3003742 [所属] University of York (英国), University of Sheffield, Wellcome Sanger Institute, University of Cambridge, University of Miami (米国), Harvard University, Universidad Regional Amazónica IKIAM (エクアドル),Museo de Historia Natural (ペルー), Université de Guyane (フランス), Muséum National d'Histoire Naturelle, Collège de France-CNRS-INSERM-PSL, Universidad del Rosario (コロンビア), Smithsonian Tropical Research Institute (パナマ)
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