イリノイ州立大学を主とする大学の研究者達に「スマート作物で集積性と持続可能性を両立」を標榜するCoverCress社の研究者が加わり、アブラナ科植物であるThlaspi arvense L.(フィールドペニークレス/グンバイナズナ)を改めて栽培化し、種子収量への影響が最小限となるCRISPR-Cas9誘導変異を特定して組み合わせることで、主要作物に加えて冬期の商品作物(cash crops)として活用できることを、
Nature Plants 誌刊行論文で紹介しています。責任著者は、イリノイ州立大学のJohn C. Sedbrook教授です。
Nature Plants 誌刊行論文で紹介しています。責任著者は、イリノイ州立大学のJohn C. Sedbrook教授です。[注] グンバイナズナは、食用やバイオディーゼル燃料の原料に利用されることもありますが、土壌中に何年も残存する多数の小さな種子を生産するため、雑草としてよく知られています。 [ウィキペディア;右図参照]
[詳細]
背景
トウモロコシ(Zea mays)、ダイズ(Glycine max)、コムギ(Triticum aestivum)などの列状作物(row crops)は、温帯地域の農地で広く栽培されて、飼料、食料、繊維、バイオ燃料の原料にされています。こうした主要作物用の農地はオフシーズンには休耕地とされるか、被覆作物(cover crops)または中間作物(intermediate crops)が植えられます。被覆作物(例えば、冬ライ麦(Secale cereale)、一年生ライグラス(Lolium multiflorum)、ダイコン(Raphanus sativus)、クローバー(Trifolium repens および T. pratense)、ヘアリーベッチ(Vicia hirsuta)は、米国では商品として収穫できないオフシーズン作物と定義されており、代わりに通常は除草剤で処理したり、次の主要作物を植える前に耕したりします。被覆作物は、多くの生態系保全への寄与と共に、土壌での炭素固定や不耕起栽培を促進することで温室効果ガスの排出量削減にも貢献します。中間作物(例えば、冬小麦、ハイブリッドライ麦、冬キャノーラ、カリナタ、キャメリーナ、冬エンドウ、オート麦、クローバーなど)は、被覆作物と同様の効果をもたらすだけでなく、穀物、飼料、繊維を商品作物として収穫できるため、利用が促進され、耕作地の拡大を伴わずに農業の集約化が可能になります。
年間を通して地表を覆う被覆作物は、持続可能な年間作付け体系を構築し、温室効果ガス排出量削減目標を達成するために不可欠と考えられています。しかし、米国中西部の1億ヘクタールの農地のうち、休耕期に作物が植えられているのはわずか7%に過ぎません。被覆作物の普及率が低い主な理由は、政府の奨励策や炭素市場のクレジットがあっても、被覆作物が採算に合わないためです。また、中間作物は被覆作物のごく一部を占めるに過ぎません。ライ麦や冬キャノーラなど、ほとんどの中間作物は、生育期間が短くないため、夏作の主要作物の間に植えることができません。また、厳しい温帯の冬を生き延びるのに必要な耐凍性(例えば、カリナタや冬キャノーラ)も持ち合わせていません。
グンバイナズナは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ナタネ(Brassica napus L.およびB. rapa L.)、カリナタ(B. carinata L.)、キャメリーナ(Camelina sativa L.)、フィールドクレス(Lepidium campestre L.)などと近縁です。グンバイナズナは、耐凍性に優れ、ユーラシア大陸原産、北アメリカに帰化し、南極大陸を除くすべての大陸の温帯地域に広く適応しています。
成果
研究チームは、耐凍性があり、生育サイクルが速い野生のグンバイナズナを新たに栽培化し、種子収量への影響が最小限となるCRISPR-Cas9誘導変異を特定して組み合わせました。その結果、エルカ酸含有量をゼロに、グルコシノレートを低く抑えた「ダブルロー」キャノーラや、種子繊維含有量を減らした種子など、高収量品種が誕生しました。グルコシノレート含有量は、R2R3-MYB(MYB28/HAG1)と塩基性ヘリックスループヘリックスMYC(MYC3)転写因子の変異を組み合わせることで、75%削減しました。
また、グンバイナズナの雑草化は、塩基性ヘリックス・ループ・ヘリックス転写因子TRANSPARENT TESTA8(TT8)のノックアウトによって大幅に抑制されました。TT8 は種子の休眠性と種皮の保護機能を低下させ、圃場での再発生を抑制しました。
栽培化されたグンバイナズナは、農家にとって炭素集約度の低い中間作物であり、2つの本格的な夏作物の間に植えることで、2年間で3つの商品作物を得ることができ、被覆作物のような生態系上の利点をもたらすとともに、再生可能燃料用の穀物を生産し、食料安全保障を強化します。
栽培化されたグンバイナズナの一連の品種は、世界中の数千万ヘクタールの農地に植えられる予定で、最初は適した農地が1500万ヘクタールある米国中西部コーンベルト(カンザス州からオハイオ州まで)の中部から南部にかけての地域で栽培されます。そこでは、ダイズやトウモロコシの収穫直後に、バーチカル耕起の際に散播したり、ドローンを使って播種したりすることができます。また、5月中旬から6月上旬にかけた収穫時にはダイズ収穫に利用されるコンバインヘッドを備えた標準的なコンバインを利用できます。
[注] 従来のグンバイナズナ栽培種にも同じ変異が導入された品種が、CoverCress™という商標でCoverCress社から商品化され、CoverCress社のFarm Adoption Programの枠組みで提供されます。なお、CoverCress社の株式の過半数をバイエル社保有しています。
[出典]
- 論文 "Creating a new oilseed crop, pennycress, by combining key domestication traits using CRISPR genome editing" Gautam B [..] Sedbrook JC. Nat Plants. 2026-01-22. https://doi.org/10.1038/s41477-025-02202-7 [所属] Illinois State University (School of Biological Sciences) (米国), CoverCress Inc, Western Illinois University (School of Agriculture), University of Minnesota (Dept Agronomy and Plant Genetics)
- NEWS "How does an unwanted weed become a desirable new crop?" Donald Danforth Plant Science Center. 2020-10-20. https://www.danforthcenter.org/news/how-does-an-unwanted-weed-become-a-desirable-new-crop/
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