(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/03/04)
- [論文] CRISPR/Cas9のトランスフェクションによってマウスの膵臓における多重遺伝子編集と膵臓がんの誘導を実現:Roland Rad (Technische Universität München)
- ヒト膵臓がんの次世代シーケンシングとマウスにおけるトランスポゾンによる遺伝子スクリーニングによって、膵臓がんに関わる膨大な遺伝子がカタログされてきた.Roland Radらは、ドイツ・英国・スペインの研究チームは、遺伝子組換えの従来の手法や、これまでのCRISPR/Cas9によるin vivo 送達法によるゲノム編集の限界を超えたゲノム編集を可能にするCRISPR/Cas9の送達法を考案した.
- 具体的には、成体マウスを開腹し、U6プロモーター/sgRNA/Cbh(chicken beta actin)/Cas9/pAで構成するベクターを膵臓実質内に注射し、in vivo エレクトロポレーション(以下、EP)によって、各細胞へトランスフェクションする.また、膵臓がんに関与するとされる腫瘍抑制遺伝子13種類と、中立な遺伝子2種類をそれぞれ標的とする高効率のsgRNA15種類を、細胞株を利用して評価・選択.
- 成体マウスの細胞へ複数遺伝子への同時変異導入を可能にするこの新手法によって、膵管腺癌(PDAC)の誘導、がん発生と遺伝子変異の有無との対応関係からの負の選択による遺伝子スクリーニング/合成致死の組合せ、遺伝子変異の組合せとindelsの入り方のパターンに基づいた転移がんの系統発生解析、ならびに、染色体再配置を実現した. また、膵臓細胞のごく僅か(器官あたり多くても数百の細胞)が一過性のCas9の標的となることから、このPDACモデルマウスは、ヒトの散発的腫瘍発生の良いモデルとなる.
- [論文] 肢帯型筋ジストロフィー患者由来iPSCの疾患変異を精密に校正:Michele P. Calos (Stanford University School of Medicine)
- 肢帯型筋ジストロフィー(LGMD)2B型と2D型の病因は、それぞれ骨格筋タンパク質ジスフェリン(dysferlin)とサルコグリカン(alpha-sarcoglycan)の変異である.
- 一本鎖オリゴヌクレオチド(ssODN)を利用したCRISPR/Cas9の相同組換え修復(HDR)機構によって、ジスフェリンのナンセンス変異と、サルコグリカンでもっとも多いミスセンス変異をアレル特異的に修復した.効率は0.7〜1.5%であった.
- 変異の修正に加えて、DICE法またはTALENを介した精密な相同組換え法(TALEN-assisted homologous recombination for insertion precise (THRIP))による遺伝子補充も試みた.
- [論文] GJA8ノックアウトによって先天性白内障ウサギモデルを作出:Zhanjun Li(吉林大学);Liangxue Lai(広州 Institutes of Biomedicine and Health)
- [レビュー] 遺伝子編集による肝臓病の治療に向けて:Clifford J. Steer (University of Minnesota Medical School)
- 100種類以上の肝臓病の病因が、遺伝性あるいは獲得性の単一遺伝子変異である.肝臓病を標的とした核酸医薬による治療は副作用と技術的限界のために極めて限定的である.ZFN、TALEN、CRISPR/Cas9ならびにPITChによるゲノム編集技術を利用した治療法の研究開発に期待.ゲノム編集因子の安定かつ効率的送達法、オフターゲット編集への対応、ゲノム編集因子の担体に対する宿主細胞の免疫応答の問題などの解決が必要.
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