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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

 世界で毎年生産される食糧のうち10億トン以上がサプライチェーン全体で失われあるいは廃棄され、1兆米ドル以上の経済的損失と9ギガトン以上の二酸化炭素排出量が発生しています。食品廃棄物を再利用する事例は存在するものの、食品廃棄物は味覚的に魅力に乏しく、リグニン、セルロース、ヘミセルロース、デンプンといった複雑な生体高分子を多く含み、消化吸収を阻害するため、その利用は依然として困難です。
 食料・農業廃棄物(food and agricultural loss or waste:FALW)を最小限に抑え、これらの地球環境への悪影響を軽減するための新たな戦略が求められています。カビやキノコなどを含む多様な微生物群である菌類は、FALW問題に対する独自の解決策を提供します。菌類は、食品を含む複雑な有機バイオマスを分解する能力を持つ、自然界のリサイクル業者です。さらに、菌類の中でも多くの糸状菌は食用であり、古くから食品発酵に利用されてきた実績があります。
 糸状菌を利用して廃棄物を発酵させ、食品に転換することは、現在の廃棄物管理戦略に代わる環境に優しい選択肢となり、世界の食料供給量を増やすための一次生産への依存度を低減することにつながります。
 かつてミシュラン2つ星レストランでシェフとして活躍し [#1]、現在、スタンフォード大学のバイオエンジアリング学科の助教授であるVayu Hill-Maini博士が責任著者となっている Trends in Biotechnology 誌刊行レビューでは、遺伝学、バイオプロセス、ガストロノミーの分野における、容易に入手可能なFALWから持続可能な食品を生産するための新たな戦略について考察しています。
[補足]
 Vayu Hill-Maini博士は、[The future of fungi」と題するスタンドーフォド大学工学部のニュースで「シェフからバイオエンジニアになった人物が、CRISPR遺伝子編集技術を使って菌類を飼いならして(domesticate)、廃棄物から不快な風味を取り除き、栄養価を高めて、新時代のチーズ、ハンバーガー、サラミなどを作っています」と紹介されています。
 Hill-Maini博士は、スタンフォード大学工学部のポッドキャスト「The Future of Everything」の「New foods and materials from fungi」のエピソード [#2] で、司会者のRuss Altman氏(スタンドーフォード大学教授)に「菌類を利用した廃棄物の食品への転換をDBTLサイクルと呼んでいます。つまり、設計 (design)、構築 (build)、試食 (taste)、学習 (learn)です」と述べています。
[注] 菌類による廃棄物の活用は、食品だけでなく、薬品などの有用物質への添加転換も進められています。
 また、「私はバイオエンジニアング(生物工学)学科の助教授ですが、生物工学を専攻したことはありません。生物学、化学、生化学を専攻しました。もしやり直せるなら、生物工学を専攻するでしょう。なぜなら、生物工学は柔軟な考え方を持つ分野で、私のような型破りな人間が様々な分野を横断し、常に境界線上にいるような状況でも活躍できる余地がたくさんあると思うからです。」述べています。
  [#]
  1. Vayu Hill-Maini氏は、コペンハーゲンの二つ星レストラン「アルケミスト(Alchemist)」のR&Dキッチンの出張シェフとして五年間活躍しました [https://vayuhillmaini.com/cooking/]。
  2. ポッドキャストの当該エピソードはYouTube 33分10秒)で視聴できますし、また、ここで引用したニュース記事で文字起こしを読むことができます。
[出典] 
  • Review "Harnessing fungal fermentation for waste-to-food conversion" Braydon Black (1) , Alessandra Massa (2) , Franklin P Lurie (1) , Anna-Katharina Preidl (1), Vayu Hill-Maini (1). Trends Biotechnol. 2026-03-27. https://doi.org/10.1016/j.tibtech.2026.02.018
  1. Department of Bioengineering, Stanford University, Stanford, CA, USA.
  2. Department of Bioengineering, Stanford University, Stanford, CA, USA; Basque Culinary Center, San Sebastián, Gipuzkoa, Spain.
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